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セ新人王は村上? 近本? 新人王争いが大激戦だったシーズンを振り返る

 

 今年のセ・リーグの新人王は、ヤクルト村上宗隆阪神近本光司が有力候補だ。村上が10代での最多本塁打記録を塗り替えれば、近本は最多盗塁のタイトルを獲得するだけでなく、セ・リーグの新人最多安打も更新。双方が最優秀新人に値する活躍を見せ、最優秀新人がどちらになるか分からない。今回は、同じように新人王の受賞者が激戦だった年を振り返る。

史上稀に見るハイレベルな争い 1998年セ・リーグ



 1998年のセ・リーグは前年のドラフトで指名された新人が次々に躍動。中でも抜きん出た活躍を見せたのが、中日の川上憲伸、巨人の高橋由伸、阪神の坪井智哉広島小林幹英の4人だ。

 1年目から先発ローテーションの一角を担った川上はチーム最多の14勝を挙げ、防御率はリーグ2位の2.57と期待に見事に応えた。高橋は126試合に出場して打率.300、19本塁打、75打点という圧巻の成績を残した。

 坪井はドラフト4位での入団ながら開幕一軍を勝ち取り、「振り子打法」でヒットを量産。終盤まで首位打者争いを繰り広げ、最終的に首位とわずか1分差の打率.327でシーズンを終えた。同じくドラフト4位だった小林は中継ぎと抑えで54試合に登板。9勝6敗18セーブと大車輪の活躍を見せた。

 結果は中日の川上が新人王に輝き、残る3人はセ・リーグ会長特別表彰を受賞。しかし、誰が受賞してもおかしくない球史に残るハイレベルな新人王争いだった。

四つ巴の接戦を制す 1992年パ・リーグ


近鉄・高村祐


 1992年の新人王は、28試合に登板して13勝を挙げ、防御率3.15の成績を残した近鉄の高村祐が受賞。しかし、この年のパ・リーグは高村のほかにも優秀な成績を残したルーキーがいた。

 まずはダイエーの若田部健一。4球団競合の末に入団した若田部はいきなり先発ローテーションに定着し、先発としてチーム最多の27試合に登板。チームで2番目に多い10勝を挙げるエース級の活躍を見せた。同じ投手では、ドラフト2位で入団したロッテ河本育之も新人ながら抑えとして40試合に登板し、19セーブと好投。

 この年は野手にも新人王を争う逸材がいた。ドラフト2位で日本ハムに入団した片岡篤史だ。1年目はチームで2番目に多い125試合に出場し、打率.290、10本塁打を記録。シーズン後半にはクリーンアップも任された。こうした活躍を受け、若田部、河本、片岡の3人は特別表彰を受けている。

まさかの伏兵が怪物ルーキーたちを抑えて受賞 2013年セ・リーグ


ヤクルト・小川泰弘


 2013年のセ・リーグ新人王は、巨人の菅野智之と阪神の藤浪晋太郎の一騎打ちが予想された。実際に菅野は27試合に登板し、13勝6敗、155奪三振、防御率3.12と活躍。一方の藤浪も、24試合に投げて10勝6敗、126奪三振。防御率は2.75と菅野を上回る快投を見せた。

 しかし、ここに伏兵が割って入る。ヤクルトの小川泰弘だ。ドラフト2位で入団した小川は、菅野や藤浪よりも先に初勝利を挙げると、7連勝、4連勝と勝ち星を積み重ね、16勝4敗、防御率2.93、135奪三振という成績でシーズンを終えた。

 結果はリーグ最多勝を挙げた小川が新人王を受賞。しかし、奪三振で上回った菅野、防御率で上回り、高卒ながら10勝の藤浪も特別表彰を受けた。

脅威のルーキーコンビが15勝で並ぶ 1987年パ・リーグ


近鉄・阿波野秀幸(左はセ新人王のヤクルト・荒井幸雄


 1987年のパ・リーグは2人のルーキーに注目が集まった。3球団競合の末、近鉄に入団した阿波野秀幸と、外れ1位指名で日本ハムに入団した西崎幸広だ。

 開幕から先発ローテーションの一角として起用された2人は着実に勝ち星を積み重ね、新人ながらチームのエースとして君臨。阿波野は32試合に登板し、15勝12敗、防御率2.88。西崎は30試合に登板して15勝7敗、防御率2.89と、ともに新人とは思えない圧巻の成績を残した。

 どちらが最優秀新人に選ばれてもおかしくなかったが、投球回と奪三振数が上だった阿波野が西崎を大きく上回る票数を集め、新人王に選出された。ちなみに、この年の新人には、後にチームの主力として成長する中日の山崎武司や、広島の緒方孝市もいた。

即戦力ルーキーたちが躍動 1990年セ・リーグ


中日・与田剛


 1990年のセ・リーグ新人王争いは、中日の与田剛、広島の佐々岡真司、ヤクルトの古田敦也という、社会人野球から入団した即戦力ルーキーが激突した。

 NTT東京から中日に入団した与田は、150キロ台後半の剛速球を武器に抑えとして活躍。当時の新人最多記録となる31セーブを挙げ、最優秀救援投手のタイトルを獲得した。NTT中国から広島に入団した佐々岡は主に先発と抑えで起用され、13勝17セーブを記録。特に抑えでは、当時のNPB記録となる17試合連続セーブを達成している。

 古田は1年目ながら正捕手の座を勝ち取り、106試合に出場。打率.250、3本塁打とバッティングでは際立った成績を残していないが、リーグトップの盗塁阻止率.527を記録し、ゴールデン・グラブ賞を受賞した。

 三つ巴の争いとなったが、31セーブを挙げた与田が新人王を受賞。佐々岡には特別賞が贈られた。

 ちなみに、この年のパ・リーグには、新人ながら打率.300、22本塁打、46打点と活躍した近鉄の石井浩郎や、シンカーを武器に123個の三振を奪い、防御率1.84を記録した西武潮崎哲也など有望な新人が多数いた。しかし、同期に野茂英雄(18勝8敗、防御率2.91、287奪三振)がいたため、いずれも新人王を逃している。

 今回の村上と近本の新人王争いも、今回紹介した激戦だった年に比肩し得る。清原和博が残した「10代でのシーズン最多本塁打」や、長嶋茂雄が樹立した「セ・リーグ新人最多安打数」を更新したというインパクトは相当なもの。後に「あの年が一番すごかった」と語られるかもしれない。どちらが新人王に選ばれるのか、11月26日の発表に注目だ。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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