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関大“快挙”の立役者となった森翔平。伸び盛りの左腕の社会人での登板が待ち切れない

 

思わぬ形で転がり込んできたチャンス


関大の149キロ左腕・森翔平は明治神宮野球大会で、大きな飛躍を遂げた


 頂点に立つことはできなかったが、学生野球のトータルにおいては、有終の美を飾った。

 明治神宮野球大会で準優勝。関大47年ぶり決勝進出の立役者となったのは、149キロ左腕・森翔平(4年・鳥取商高)である。

 高校時代は甲子園出場経験なし。3年間における最高成績は3年春の県大会優勝で、中国大会進出。同大会1回戦では1学年下の創志学園高・高田萌生(現巨人)と先発で投げ合っている(鳥取商高は0対2で敗退)。3年夏の鳥取大会はマウンドに上がらない際は「三番・中堅」と、野球センスを披露してきた。

 関大では苦しんだ。関西学生リーグ戦のデビューは3年春。一方、同級生の右腕・肥後皓介(4年・広陵高)は1年春からマウンドを踏み、3年春からはチームを支える主戦格として活躍し、森とは水を空けられた。

 しかし、この秋、思わぬ形でチャンスが転がり込んできた。肥後が右肩痛のため、戦線離脱。穴が開いた先発の1枠に森が滑り込んだ。3年生左腕・高野脩汰(出雲商高)との2本柱でリーグ戦を戦い、ついに大一番のときを迎えた。勝ったほうが優勝の近大3回戦。この一戦で先発を託された森は8回無失点で、4季ぶり37度目のリーグ制覇へと導いた。

 明治神宮大会出場をかけた関西代表決定戦では、天理大との第一代表決定戦で1失点完投勝利(3対1)。2年ぶり7回目の本大会出場の原動力となり、最優秀選手賞と初タイトルを手にした。すっかりチームの信頼を得た森。明治神宮大会でも金沢学院大との2回戦で9回途中まで無失点。大会直前の登録変更で戦線に戻った肥後が救援し、最後を締めている。

 東海大との準決勝は6対6のまま延長へ。関大はタイブレーク(無死一、二塁からの継続打順)となった10回表に2点を奪い、逃げ切り態勢に入る。その裏、5番手で救援した森は1失点も、後続を抑え、47年ぶりの決勝進出を決めた。人生初の3日連続登板となった慶大との決勝で先発。「疲れは言い訳にならない」とマウンドで腕を振り続けたが、8回途中4失点で敗戦投手(0対8)となった。

山口高志氏も高い評価


 関西勢としては1997年の近大以来、22年ぶりのファイナル進出。「秋日本一」はあと一歩で届かなかったが、関大の快挙が色あせることはない。16年から母校・関大のアドバイザリースタッフを務める山口高志氏(47年前のエース、元阪急)は「今年は出場する4回生が少ないんです。アイツが4回生の思いを背負って投げてくれた。もともと力はあったが、春までは(肥後と高野がおり)、なかなか順番が回ってこなかった。秋はようやく先発の枠に入り、彼の野球人生、チームにとっても良かった」と労いの言葉をかけた。

 山口氏は現役引退後、阪急、オリックス阪神らでのコーチ経験も長く、森の将来性を買っている。大学卒業後は社会人の三菱重工神戸・高砂でプレーを続ける。関西学生リーグ戦では通算3勝にとどまるが、明治神宮大会を含めたこの秋の飛躍で、大きな自信を得た。

 山口氏は森の良さをこう語る。

「全部の球種(直球、カーブ、スライダー、チェンジアップ、カットボール)でコントロールが良い。体が強くなれば、期待が持てる」

 山口氏は関大卒業後、社会人・松下電器(現パナソニック)を経て、75年ドラフト1位で阪急から指名を受けた。プロ生活8年で着けた背番号は、森が関大で背負った「14」と同じである。伸び盛りのサウスポー。2020年、社会人球界での登板が待ちきれない。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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