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週べ60周年記念

近鉄応援団の悪評/週ベ回顧

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

パのホームラン王争いの行方


表紙は巨人高田繁



 今回は『1969年9月22日号』。定価は70円。

 東映・大杉勝男と阪急・長池徳二のホームラン争いが熾烈になっている。
 一時は大杉が独走気配だったが、長池が打ちまくり、9月7日現在では長池28本、大杉27本となっている。
 しかし、長池にタイトルの話を振ると、
「連続9年の野村さん(克也。南海)と競り合ってなら価値があるけど、相手が大杉だからなあ」
 おそらく、2カ月ほど前、独走気味だった大杉が、
「野村さんとホームランは争いたいんだ。これが本当の気持ちさ」
 と2位の長池眼中になし、のコメントをしたこともあった。

 一方、故障離脱もあって数字が伸びない野村は、チームのどん底状態もあって、このオフ、兼任監督のオファーがくるのでは、と噂になっていた。
 野村は、
「男としてやりがいのあるものだと思う。ただ、現役と監督の掛け持ちは反対や。監督をやるからには、すっぱり現役を離れてからしたい」
 と言っていた。

 9月3日からの首位阪急と2位近鉄の3連戦が大いに盛り上がった。
 3連戦の前の両チームのゲーム差は0.5だ。
 西宮球場は1戦目4万2000人、2戦目2万7000人、3戦目が3万2000人。売店収入も含め、5000万円くらいと言われ、阪急の営業担当者はホクホク顔だった。
 ただ、試合内容はあまりぱっとしなかった。
 3戦目5対10と大敗し、1勝2敗に終わった近鉄・三原脩監督は「アホらしうてものが言えるかい」と一言。乗ったタクシーをファン(どちらの?)が取り囲んで車体をたたき、さらにはワッショイ、ワッショイと揺らしたが、三原監督は正面をにらんだままピクリともしなかったという。

「新幹線シリーズ」とも名付けられた3連戦。さぞやスピーディだったのではと思ったが、実は逆。3戦とも3時間10分を超え、新幹線ひかりの大阪・東京の3時間10分並みだったからだ。
 当時9回で3時間を超えることはまずなかった。

 長くなった理由はスパイ疑惑だ。互いの投手がスパイを警戒してサインを複雑し、インターバルが長くなったことがある。
 近鉄の選手が「センター後方のスタンドにトランシーバーを持った男が数人いて、サインを知らせている。あれでは野球にならん」と言えば、阪急側が「外野から望遠鏡でサインを盗むのは近鉄の専売特許やないか」と言い出す。大阪の夕刊紙では「暗躍阪急スパイ団」と記事が出て、三原監督も「阪急さんは3年前からあれをやってますよ」と涼しい顔で言っていた。

 対して怒ったのが阪急・西本幸雄監督だ。
「そんな汚いことまでして勝ちたいとは思わんですよ。もしそのスパイがいたら2戦目も負けていなかったはずじゃないですか。そんな興味本位のうそっぱちの記事は野球界を毒するだけですよ」

 試合が長引いた理由がもう1つある。
 近鉄ファンだ。やたらとモノを投げ込み、立ち入り禁止の箇所に入り込んで、警備員とケンカ。紙ののぼりには「近鉄一家殴り込み」と書かれ、やたらヤジも汚かった。
 OL風のグループ客が記者席にむかってこう言ったという。
「あなた記者でしょ。こう書いてよ。私たち近鉄ファンは日生はガラが悪いからと思うて、今まで見にいくのやめていたんやけど、今度は西宮でしょ。ここなら少し上品に見られるやろうと思っていたら、なによこのありさまは。あきれてものもいえへんわ。好きな近鉄の試合をゆっくりみたい思うたのに」
 
 仕方ない。近鉄は河内だ。ただ、近鉄の試合に賭け屋たちが多数現れるという悪評はいけない。

 では、またあした。
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