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外野手が行う“フェイント”の効果は?【前編】/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者は現役時代にゴールデン・グラブ賞を3回獲得した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.ランナー二塁、もしくは三塁で外野フェンス際への大きなフライに対し、実際には頭上を越えるのに、捕る構えをして相手を惑わせる場面を見ました。どのくらい効果があるのでしょうか。また、このときに外野手が注意していることとは?(大分県・22歳)



A.フェイントはダイレクト捕球が難しい場合の選択肢の1つ。ランナーを先の塁へ進ませないためのテクニックです


イラスト=横山英史


 たしかに、ファンの方の中には疑問に思う方もいるでしょうね。普通に追いかけたほうがいいのではないか? と。1つだけ先に指摘しておくと、いわゆる捕れるふりをする“フェイント”は、ランナー一塁、もしくは二塁のときにやることはありますが、三塁ではしないと思います。

 ここではなぜ“フェイント”をするのかということをまず考えなければいけません。守備をする際に外野手が思っていることは、大きく次の2つに分類されると思います。まずは(1)ダイレクトキャッチでアウトを取ること。次に(2)ダイレクトで捕れない場合は、何とか打球を止めて、極力少ない進塁で抑えること(外野手と外野手の間を抜かれない、打球を後逸しないこともこれに含まれると思います)でしょう。

“フェイント”は(1)(つまりダイレクト捕球)が難しい場合の選択肢の1つで、「頭を越されそうだな」と打球判断ができたときに行うものです。必死に打球を追いかけてしまうとランナーもその動きを見ています。ハーフよりも大きめに出て、しかも2つ以上先の塁を意識しての走塁になりますから、ランナー二塁ならほぼ確実にホームにかえられてしまいます。また、ランナー一塁でも三塁はほぼ確実に、足の速いランナーや打球判断のいいランナーにはホームまでかえられてしまう可能性も出てきます。ただ、外野手としてはそれは避けたい。そこで“フェイント”でランナーの判断を惑わすのです。

 ランナーもバッターのスイングやインパクトを見ていますから、「これは越えそうだ」と判断はできますが、外野手が「オーライ」と手を挙げて捕球姿勢に入ると「あれ? 意外と詰まっているのかな?」と惑わすことができるわけです。

 捕球されたらもといたベースに戻らなければいけないですし、打球が上がった場所によってはハーフからGOではなく、タッチアップも選択肢に入れなければいけません。例えば、ライト方向にフライが上がり、ライトが捕球姿勢に入れば、二塁ランナーはタッチアップすることが求められます(カウントによる)。そういう考えをランナーに持たせるだけで外野手の勝ちで、頭上を越されて素早く処理すれば、二塁ランナーなら三塁へ、一塁ランナーなら二塁への進塁でとどめることも可能になる場合があります。

<「後編」へ続く>

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2019年11月4日号(10月23日発売)より
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