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週べ60周年記念

南海・野村克也監督就任の波紋/週ベ回顧

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

荒川は大洋入りするのか


表紙は南海・野村克也監督



 今回は『1969年12月8日特大号』。定価は80円。
 
 11月20日、第5回ドラフト会議が開催。この年からラジオの実況中継が始まったらしい。 
 当時は予備抽選で順番を決めて指名していくシステム(競合なし)。1番の中日、早大の谷沢健一は順当だったが、2番の阪神は三沢高・太田幸司と相思相愛と言われながら、東海大の上田二朗を指名した。
「あっと驚くタメゴローだね」との声もあがった(と書いてあった)、サプライズ指名だった。
 直前に就任した村山実兼任監督が「即戦力の投手がほしい」と言ったことで軌道修正したらしい。太田を指名したのは近鉄だったが、知らせを聞いた太田は明らかに戸惑いの表情を浮かべ、父親は「近鉄というのは、どんな会社ですか」と報道陣に尋ねていた。

 会議直前、「アトムズか巨人以外は絶対に行かない」と言っていた早大・荒川堯は、大洋が強行指名。荒川は「大洋には行きません」と、きっぱり言い切った。
 義理の父である巨人・荒川博コーチも、
「1年浪人すればいい。息子の意思を尊重する」と話していたが、大洋は荒川夫婦の仲人でもある別当薫監督の出馬で、説得したいと考えていたようだ(別当は、荒川が毎日で現役時代の監督だった)。

 実は谷沢も「セの在京球団が希望」と話していたが、中日の指名に笑顔。まず入団は固いようだ。

 野村克也兼任監督が誕生した南海では、レジェンドエース、杉浦忠が退団を希望していた。
「新監督の誕生の後で、変な誤解を受けるかと思ったが、結果的にこのタイミングになっただけ。一応、慰留されたが、私の意志に変わりはない」
 この年は30試合に投げ、2勝。血行障害で長いイニングを投げる先発にドクターストップがかかった後、リリーフに回り、結果を出していたが、正直、そのリリーフでも、もう難しいかと感じさせる1年だった。

 杉浦は、球団の自分に対する扱いへの不満で、野村とは関係ないとは言っていたが、“鶴岡派”と言われていただけに深読みの声は多かった。

 少し前になるが、野村監督と、その鶴岡一人元監督が、日本シリーズで“対面”していた。
 野村がまだ監督就任を引き受ける前、臨時解説者として球場に行った際だ。鶴岡もその日の解説で来ていた。
「別に理由はないけど、ワシの気持ちの整理もついてないし」と野村は徹底的に鶴岡を避け、放送室に閉じこもったが、鶴岡はそんなことを気にせず、放送室に行き、
「おう、ノム、監督は決まったんか」
 と声をかけた。野村はこれに、目礼で応えたが、さらに、
「まあ、監督いうものは生易しいものやないで。性根を入れてかからなでけんぞ。まだ早いと思うがな」
 と一言。辛口だが鶴岡らしい激励とも思えたが、野村は、これを嫌味と受け取ったか、表情をこわばらせた。

 阪神監督をクビになった後藤次男の話もあった。後藤は何かと反目していた吉田義男と村山実を兼任コーチとすることで、自覚を持たせ、手を握らせようとしたが、完全に裏目だったという。コーチ会議で2人が要求したのは、
「このゲームは投手がまずくて負けた、このゲームは打者がまずくて負けたと結論を出して、論功行賞をやろう」というもの。
 それでは投手、野手の溝を広げるだけと認めなかったが、その後も何かにつけて衝突していたらしい。

 後藤がさらに困ったのが村山と江夏の不仲。江夏は「村山さんは都合のいいときだけコーチになり、都合が悪くなると選手に戻る」と不満をもらし、村山が選手の私生活を厳しく管理しようとしたことへも反発した。
 さらにさらに困ったのが、新人・田淵幸一の扱い。守りに不安があった田淵と組みたくないと投手陣が文句をいい、使わないと野田オーナーから「なぜ田淵を捕手で使わないんだ」と責められる。

 後藤は次のように話している。
「阪神というチームは分からんチーム。内ゲバもあれば外ゲバもある。複雑怪奇、わけの分からんチームだ。
 私はいま内心ではほっとしている。苦しみの連続だった1年間を終えて、やっと安らぎが戻った。来年はのんびりとネット裏から野球を見るつもりだ。1年生監督としては精いっぱいやったつもりでいる。その意味で監督生活に後悔はない」

 では、また月曜に。

<次回に続く>

写真=BBM
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