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プロ野球20世紀の男たち

白井一幸、田中幸雄、広瀬哲朗、中島輝士、片岡篤史……&小笠原道大「大沢“親分”最後の愛弟子たちから“ビッグバン打線”へ。日本ハム1990年代」/プロ野球20世紀の男たち

 

プロ野球が産声を上げ、当初は“職業野球”と蔑まれながらも、やがて人気スポーツとして不動の地位を獲得した20世紀。躍動した男たちの姿を通して、その軌跡を振り返る。

旋風を巻き起こした93年



 20世紀を知るファンなら、日本ハムの監督として真っ先に挙げるのは、“親分”大沢啓二監督だろう。昭和の昔、1976年に監督となり、81年にはリーグ優勝。83年オフに勇退したが、翌84年シーズン途中に復帰して閉幕まで指揮を執った。厳密には2度にわたって務めたことになるが、この“第1期”については、大沢を紹介した際に触れている。当時からキャラクターは圧巻だったが、時代が平成となって迎えた“第2期”、93年から94年の2年に過ぎないが、この2年間のパフォーマンスは、ますます冴え渡っていたように思える。そして選手たち、特に打者たちは、おおいに躍動した。

日本ハム・白井一幸


 紆余曲折のあった“第1期”ラストイヤーの84年に入団した白井一幸は中心選手に成長。80年代の日本ハムには2人の“田中幸雄”がいて、先輩で投手の“オオユキ”田中幸雄は85年にノーヒットノーランを達成したが、90年に中日へ。残った内野手の“コユキ”田中幸雄も“親分”の復活とともに故障から復活する。だが、5月には遊撃から左翼へコンバート。故障で不在だった92年に遊撃を守り抜いた広瀬哲朗が、ふたたび遊撃に返り咲いた。

日本ハム・広瀬哲朗


 二遊間を形成した広瀬は、駒大の後輩でもあり、打順でも一、二番でコンビに。リードオフマンの白井に、闘志を買って大沢監督が主将に任命した広瀬が続き、果敢なヘッドスライディングで期待に応えていく。89年の開幕戦で新人ながら本塁打を放って鮮烈デビューを飾った中島輝士もレギュラーを維持。1年目の92年から三塁の定位置をつかんだ片岡篤史は、打順は六番が多かったが、迎えた93年には三番に打順を上げて、その打棒に磨きをかけていく。助っ人も“踊るホームラン王”ウインタースに、独特のヒゲと勝負強い打撃が持ち味のシューと、キャラクターは抜群。いぶし銀の鈴木慶裕も中堅手として外野の要を担う。

 司令塔は球界きってのインサイドワークを誇った田村藤夫。まさに、役者がそろった。大沢監督も舌好調。黄金時代を謳歌していた西武に噛みつき、「西武の野球は、つまらん。プロ野球は勝ちゃいいってわけじゃねぇだろ。いまの俺は鬼退治に出かける桃太郎の気分だよ」など、荒っぽいリップサービスを繰り広げて、西武との対決という構図を構築するだけでなく、剛速球で沸かせたロッテ伊良部秀輝に惨敗すると「痛ぇ、痛ぇ。幕張の海には伊良部クラゲがいる。しびれて仕方ねぇぜ」などと、パ・リーグを盛り上げていく。

 日本ハムも4月は首位を走り、5月からは西武の後塵を拝したが、8月22日には西武に3連勝、24日には首位を奪還。貯金は19で、大沢監督も「貯金なんて好きじゃねぇんだ。金も持ってねぇしな。でも勝ち星が貯まるのは悪い気分じゃねぇな」などと上機嫌だったが、すぐに陥落、猛追したものの1ゲーム差の2位に終わった。

“ビッグバン打線”が猛威をふるった98年


日本ハム・小笠原道大


 だが、翌94年は最下位に。前年は特別功労賞も贈られた大沢監督だったが、本拠地の東京ドームでの最終戦で「親にも頭を下げたことはねぇが、こうするしか、わびることができねぇんだ」とファンに土下座。後任となった上田利治監督によって選手の若返りも進められていく。

 ふたたび活気づいたのは98年だった。リードオフマンの田中に奈良原浩が続き、片岡、ブルックス、ウィルソン、西浦克拓らが打ちまくって“ビックバン打線”と呼ばれ、首位を快走。またも最終的には2位に終わったが、その後も打線の勢いは変わらず。翌99年は井出竜也がリードオフマンとして打線を引っ張る。二番で続いたのが3年目の“ガッツ”小笠原道大だ。捕手として入団も、一塁でレギュラーに定着。“恐怖の二番打者”として25本塁打を放つ。続く2000年も二番だったが、182安打、31本塁打、102打点、そして打率.329。大きな構えからのフルスイングは新時代の到来を予感させた。

 そして21世紀、日本ハムは東京に別れを告げて北海道へ。移転3年目にして、大沢監督が導いた81年に続くリーグ優勝、そして当時は果たせなかった日本一にも輝いている。

写真=BBM
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