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2020年ドラフト1位を狙う近大“糸井嘉男二世”に迫られる1つの決断

 

近大・佐藤輝明は関西学生リーグで、今秋までに11本塁打を放っている。左の長距離砲としてNPBスカウトから注目を浴びている


 2020年ドラフト戦線は、すでに始まっている。「大学No.1スラッガー」として呼び声高いのが近大・佐藤輝明内野手(3年・仁川学院高)である。

 関西学生リーグで、1年秋から今秋まで5シーズン連続でホームランを記録しており通算11本塁打。50メートル走6秒0。遠投は自己申告で「測ったことはありませんが、100メートル以上は投げられます」という強肩を誇る。パワーとスピードがある3拍子そろったプレースタイルに、近大の先輩である阪神に在籍する「糸井嘉男二世」の称号がついて回る。

「大学時代のプレーを見たことはありませんが、右投げ左打ちで、遠くへ飛ばせて、足もある。共通点は多いと思います」。そう語るのは近大・田中秀昌監督だ。かつて、上宮高(大阪)での指導実績があり「元木(元木大介、現巨人ヘッドコーチ)らいろいろなバッターを見てきましたが、飛距離に関してはすごいものがある」と、佐藤の潜在能力の高さに驚く。

 奈良県生駒市内にある近大総合グラウンド。普段、練習で使用する「第二グラウンド」(通称・下のグラウンド)には高いネットが張られているが、近隣の民家に打球が直撃してしまうため、この場所での打撃練習は禁止。

「(周囲に民家がない)上のグラウンド(第一グラウンド)もありますし、下では逆方向(バックネットに向かって)に打っています」(田中監督)

 佐藤のポテンシャルを認め「ドラフト1位で行ってほしい」と願うからこそ、指揮官の注文は多い。「野手でドラフト1位の評価を得るのは大変なことです。結果がすべて。打つだけではなくて、守り、走塁にも力を入れていかないといけない」。今秋は打率.188と苦しんだ。佐藤の根底にはこうした考えがある。

「好きな言葉は『何でもあり』です。形にとらわれることを、あまり好みません。基本的なことは大事にしていますが、あとはオリジナル。打てば何でもいい、と思っています」

2014年4月から母校・近大を指揮する田中秀昌監督は、佐藤に「ドラフト1位」の期待を寄せるからこそ、注文も多くなっている


 フライボール革命。MLBでスラッガーの主流となってきた打撃技術を、佐藤も動画で研究しながら採り入れてきた。しかし、田中監督は左脇を大きく上げて構える佐藤のフォームを歓迎していない。それが、今秋の打撃不振の要因であると分析しているからだ。

「自然体で打ってほしい。NPBの柳田(柳田悠岐ソフトバンク)、筒香(筒香嘉智、20年からレイズ)、丸(丸佳浩、巨人)、村上(村上宗隆ヤクルト)らを見ても、佐藤のような構えをしているスラッガーはいません。下半身の動きを大切にして、確実に『ポン』と振っていけば、もっと打てる。能力はトップレベルで、当たれば勝手に飛んでいくんですから」

 11月の新チームから副将の佐藤。「マイペース」を自認するが、最上級生としてチームを背負う責任が芽生えてきたという。しかし、佐藤には「飛ばすバッターが好き。本塁打が野球の華? 間違いないです」と、飛距離へのロマンがある。とはいえ、今秋はチームに迷惑をかけた思いもある。指揮官の意見を参考にするのか。それとも、我が道を貫いていくのか――。

 今秋は右ヒジ痛の影響で一塁に就いたが、来春は本来の三塁へ戻る。ホットコーナーを守る不動の四番は2020年春の開幕までに、一つの決断に迫られている。

文=岡本朋祐 写真=太田裕史
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