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全国注目球児がライバル視する明石商高の“本格派右腕”中森俊介と“攻撃的一番”来田涼斗

 

中森の高卒プロ志望は容認


明石商高の151キロ右腕・中森俊介は、同校グラウンドの三塁側ブルペンで力の入った投球練習。12月中旬でも147キロを計測し、好調を維持している(後方で見守るのは明石商高・狭間善徳監督)


 明石商高は「投手王国」である。2018年のドラフトでは同校OBの日体大・松本航西武1位指名を受けた。20年は同校出身の東海大の153キロ右腕・山崎伊織が早くもドラフト1位候補に挙がっている。山崎の同級生で春夏を通じて同校初出場となった16年春のセンバツで8強へ導いた日体大の右腕・吉高壮も、素材の良さが注目。この3人は大学を通じて、着実に成長した成功例である。

 さらに、現役では1年夏から今夏まで3季連続で甲子園(19年は春夏連続4強)に出場している151キロ右腕・中森俊介(2年)が、NPBスカウトから注目を浴びている。

 明石商高・狭間善徳監督は「高校から(プロへは)行かせたくないタイプ。生徒たちを父の目で見ていますから、まずは安定を優先します。冒険はさせたくない」との基本方針がある。しかし、中森に関しては「意識が高くて、頭も良い。指にかかったときのボールが違う」と、高卒でのプロ志望を容認している。

 右投手が育つ土壌は、どこにあるのか。基本をしっかりたたき込んでいるからである。ポイントは大きく4つ。軸足で真っすぐ立つ。上半身と下半身のかみ合わせ(体重移動)。ほどく(右手をグラブから外す)タイミングにより、左肩の開きを抑える。そして、リリース時には、上半身と下半身を同時に、違う方向へうまく力を注ぐ(伝える)。独特な表現ながら、狭間監督は三塁側ブルペンで、一つひとつ丁ねいに指導。監督の一方通行ではなく、コミュニケーションを大事にしている。松本、山崎、吉高、中森に共通しているのは、ムダな力が入っていないスムーズなフォームだ。

「シンプルな形を追い求めています。基礎があっての応用です。足し算、引き算を理解できなければ、因数分解を説くことはできないのと一緒。順番を間違えると、大変なことになる。相当な根気と会話が必要となります」

 中森は12月14日、3年生との引退試合で147キロを計測。22日からは兵庫県選抜としての台湾遠征が控えており、年末へ向けても充実の日々を過ごしている。

潜在的なスター性がある来田


左打席から高校通算29本塁打で、50メートル走5秒9を誇る明石商高・来田涼斗。パワーとスピードを兼ね備え、スカウト注目の存在だ


 投手だけではない。中森と同様、1年夏から3季連続で甲子園の土を踏んでいる来田涼斗(2年)も兵庫県選抜に選出された。明石商高において、金属バットの使用は大会期間中限定。常日ごろから木製バットで練習しており、木製を使用する同チームでも違和感なく快打を連発している。

 50メートル走5秒9の俊足に、高校通算29本塁打と、スピードとパワーの持ち主だ。今春のセンバツ準々決勝(対智弁和歌山高)では、先頭打者弾&サヨナラ弾という史上初の偉業。今夏の準決勝(対履正社高)でも先頭打者本塁打と、攻撃的一番打者は脚光を浴びてきた。

「人間がカワイイ。憎めない男」(狭間監督)

 新チームから主将に任命された。来田はもともと背中で見せるタイプ。2年夏までは自身のプレーに集中してきたが、大役を担ったことで自覚が出てきたという。「来田は持っています。(攻守交代を決定する)大事なジャンケンでは必ず勝ちますし、抽選の強運もある。大きな大会で活躍する。女性人気がものすごいんですよ」。潜在的なスター性。狭間監督は来田の「プロ志望」も後押しする構えだ。

 昨秋の近畿大会は準々決勝敗退。近畿地区のセンバツの一般選考枠は「6」であり、明石商高は4季連続甲子園出場へ望みをつないでいる(選抜選考員会は来年1月24日)。

 投打の看板選手を擁する明石商高。センバツ出場候補校の注目選手に「ライバル」を聞くと、2020年の構図が見えてきた。明治神宮大会を制した中京大中京高の148キロ右腕・高橋宏斗、九州大会4強の大分商高の147キロ右腕・川瀬堅斗と高校通算53本塁打の東海大相模高・西川僚祐は「中森俊介」を挙げた。また、東海大相模高で今年9月のU-18W杯で高校日本代表に名を連ねた鵜沼魁斗は同じ一番打者の「来田涼斗」を強く意識。同44本塁打で、投手も兼任する主将・山村崇嘉は「来田涼斗」「中森俊介」の名前を挙げた。2人は全国からマークされている。

「自分自身、まだまだです。これまでは先輩たちの力で甲子園に出場でき、何とかベスト4まで進出できた。今後は自分の結果、勝ちにこだわっていきたい」(中森)

「そう見られているだけで、うれしいです。目を向けられている分、負けられない。全員がライバルです」(来田)

 令和2年。大きな可能性が詰まった本格派右腕とリードオフマンから目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=太田裕史
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