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早川隆久&今西拓弥――早大2人の左腕がプロを目指す決断をした理由とは?

 

きっかけは今夏の日米大学選手権


早大・安部球場前でポーズを取る新主将・早川(左)と今西(右)。左腕2人は2020年、リーグ優勝奪回とプロ入りへ向けた大事なシーズンとなる


 2015年秋以来の東京六大学リーグ戦での優勝を目指す早大。20年は小宮山悟監督(元ロッテほか)の就任2年目シーズンとなるが、「プロ志望」の左腕2人がいる。

 早大では18年の小島和哉(現ロッテ)以来となる投手で主将となった最速151キロの早川隆久(3年・木更津総合高)と、身長2メートル体重100キロと、規格外のスケールを誇る今西拓弥(3年・広陵高)だ。

 なぜ、プロを目指す決断をしたのか?

 早川は木更津総合高(千葉)で3回の甲子園に出場し、3年時は春夏連続で8強進出。高校日本代表にも名を連ねた逸材だが、野球のレベルアップと同時に、教員を目指す夢もあり大学へ進学。早大では教員資格(保健体育科)を取得するため、教職の授業も履修している。来年には教育実習も控えるが、プロへの気持ちが大きく傾いている。

 きっかけとなったのは今夏の日米大学選手権。第2戦、第4戦の先発を任され、9イニングを投げ防御率0.00で最優秀投手賞に輝いた。

「いくら周りの方から『良いボールを投げる!』と言われても、自分としては説得力がなかったんです。大学日本代表に選出されたことがポイントでした。大会でもある程度の結果を残すことができ、自信になりました」

 あこがれの人物が2人いる。

「小宮山監督はプロであれほどの実績を残し、あれだけの努力をできる人もいない。そして、思考力。何事にも、奥深くまで考えている。もう一人、尊敬しているのは早大の大先輩である和田(毅、ソフトバンク)さんです。4年間で476奪三振。想像もできない『お化け』のような数字です。大学当時を知るゼミの先生も『入学時はそこまで注目される投手ではなかったが、地道な取り組みで、成長できることを証明した4年間だった』と」

 小宮山監督と和田に共通するのは、投手として基本となる「下半身強化」と精密な「コントロール」である。早川もストイックなまでに追い込んで、先輩2人がランニングした安部球場のポール間を、限界を超えるまでトレーニングするのが日課。基礎体力を構築した上で、正しいフォームで良いボールを投げる。早川には「小宮山イズム」が浸透している。最速151キロのボールのキレと、頭を使った投球術で勝負するのが早川の特長である。

個性がまったく異なるサウスポー


 実績豊富な早川とは対照的に、ノンキャリアから這い上がってきたのが、今西である。名門・広陵高では3年間で甲子園の土を踏むことができず、背番号1を着けたこともない。「大型投手は時間がかかる」と言われるが、今西も一つひとつステップアップしてきた。

「この恵まれた体があったからこそ、早稲田にも入れましたし、野球を続けることもできた。育ててくれた両親に感謝したいです」

 ここまで身長が伸びたのは、幼少時から大好物だという牛乳と睡眠。やはり、寝る子は育つようである。中学3年時にはすでに190センチあり、200センチとなった高校3年で身長は止まった。一方で体重は85キロと、細身だった。

 セットポジションであったフォームは3年春にノーワインドに変え、秋からはワインドアップにし、打者へ威圧感を与えている。最速147キロ。高校時代はさらに角度を生かすため、オーバースローに挑戦したこともあったが、横回転である体の動きにマッチしたスリークオーターが最も合っているという。

「アスリートは身長から体重を引いて『100』になるのが適正と言われている」と、1日4キロの米を摂取する食トレを継続して、入学から2年間で15キロ増の100キロの大台に達した。球速もアップしたが「やや動きにくい」と、今冬は筋力を増やし、来年はベストパフォーマンスが可能な「2メートル、100キロ」を目指している。

 今秋は屈辱を味わった。慶大2回戦で救援に失敗すると、雪辱を期して先発した3回戦でも、2回を持たずに降板。落ち込んだ時期もあったが、下を向いている時間はない。

「この秋、悪かったので悩んだところもありましたが、自分の目標をブラしたくない。4年春に結果を残して、堂々と(プロ志望届を)出せるようにしたい」

 3年時までは救援登板が多かったが、学生ラストイヤーは「先発完投」にこだわる。その理由は、チームを勝利へ導いた上で「上の世界(プロ)でやりたいと思っているので、アピールする意味でも必要だと思う」と、意欲的だ。「1回戦を投げる早川の後を受けた2回戦は、重要なポジションです。仮に負けていれば、落とせない一戦になりますし、先勝で迎えて、自分が負ければ、(3回戦の)早川に負担をかけることになる」。今西は2回戦の先発として、対戦する全5カードで白星、つまり「シーズン5勝」を究極の数字として挙げる。

 大学授業の体育で一緒になることが多い早川は“今西伝説”を明かす。

「バレー、バスケットをやらせても、あの背丈ですから、立っているだけで何でもこなせる。手先も器用なので、変化球を覚えるのも早い。あれだけのポテンシャルは、自分に分けてほしいほどうらやましいですし、生かしてほしいと思います」

 ドラフト戦線では毎年のように、最も需要が高いと言われるのがサウスポーだ。同じ左腕でも、個性がまったく異なる2人。元プロ投手の指揮官の下でラストシーズン、どのような進化を遂げるのか、興味は尽きない。

文=岡本朋祐 写真=大泉謙也
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