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日本ハム・宮西尚生がブルペンに入る前に必ずすることとは?

 

プロ野球史上初の300ホールドもマークした宮西。2020年シーズンもその存在はチームに欠かせない


 実に興味深い話だった。

 2020年シーズンでプロ13年目を迎える宮西尚生。ここまで先発登板は一度もなく、中継ぎ一筋で数々の金字塔を打ち立ててきた。3度の最優秀中継ぎのタイトル獲得、前人未到の300ホールド、12年連続50試合登板など、残してきた数字を見れば見るほど、もっと高く評価され、スポットライトが当たってもいい左腕だと思う。

 そんな鉄腕に先日、リリーバーの生き様についてじっくりと話を聞く機会があった。百戦錬磨のベテランらしい、こちらが知らなかった面も多くあり、引き込まれるように彼の言葉に耳をかたむけた。

 中でも新鮮だったのはルーティンについて。何回に食事をして、ウエートをして、肩を作り始めて、ブルペンで何球を投げるのかまで細かく完璧に決めている投手もいれば、その日のコンディションによっていくつかのパターンで臨機応変に調整をする投手もいる。

 宮西の場合はどちらかと言えば後者だが、ブルペンに入る前にこれだけは変わらず「必ずすること」があるという。それは、トイレの個室にこもること──。本人に理由を聞くと「球場ってどこに行っても1人になれないじゃないですか。1人になれる場所って言ったら、トイレの個室ぐらいで。いつからかそこがブルペンに入る前の僕の指定席になりました(笑)」。

 だが、個室の中で今日戦う相手打線のことをイメージしながら、精神を最大限に集中するわけではなく……何も考えずに「無」の境地になるんだという。長いときで約10分間。何も考えない、頭をからっぽにする無になるための時間が、宮西をマウンドに向かわせる力を与えてくれるという。
厳しい場面の連続の中での登板で肉体だけでなく、精神も日々すり減らしているリリーバー。テレビでは絶対に映らない、その舞台裏では、さまざまな創意工夫、メンタルを含めた調整法が存在するんだということを感じさせられたエピソードだった。

写真=BBM
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