週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

ネットだけでは学べない。二塁奪取を誓う西武・山野辺翔が1年目に得た気付き

 

秋季キャンプで課題を自覚



 源田壮亮外崎修汰金子侑司秋山翔吾浅村栄斗(現楽天)、片岡易之(現在は「治大」。現巨人二軍内野守備走塁コーチ)。西武ライオズが輩出した、日本プロ野球界を代表する選手たちだが、彼らは全員、『ドラフト3位入団選手』という共通点を持つ。こうした背景から、西武のドラフト3位指名選手には、格別な“一目”が置かれる傾向がある。今季のルーキー・山野辺翔もその一人だった。特に、今季は浅村が楽天へFA移籍したため、二塁のポジションが空いていた。そのレギュラー候補の一人として、社会人野球でも実績のある山野辺には、2年前の源田同様、1年目からの定位置奪取に、より一層の期待と注目が集まっていた。

 しかし、プロの世界はそんなに甘いものではない。春季キャンプをA班(一軍に相当)で過ごす中で、「たくさんのことを教えていただいたのですが、そこでなかなか頭と体の動きの一致ができなかった」。最も苦労したのが、守備時の足の使い方だという。自身がアマチュア野球の中で培い、結果を残してきた考え方と、プロの世界での考え方との違いに、頭では理解しながらも、体がなかなか順応してくれなかった。開幕を二軍で迎え、その一致に努めたが、4月20日に一軍昇格を果たしてからも、完全習得には至らず、5月23日に登録を抹消された。結局、その後再昇格は、優勝決定後の最終戦1試合のみ。シーズン通して9試合の出場に終わった。

 プロ1年目を、「期待もされていたと思うので、成績だけを見たら、不甲斐ない」と振り返る。だが、その一方で、「自分としては、いろいろ教われたので、本当に勉強になった1年でした。一軍にはなかなか上がれませんでしたが、ファームで、各担当コーチの方に、一つひとつ整理してもらえたおかげで、思い切りやるということができるようになり、貴重な時間となりました」と、大きな収穫も口にした。

 秋季キャンプでは、現役時代“内野守備の名手”で名を馳せた辻発彦監督から、再び直々に指導を受け、あらためて課題を自覚した。入団時からの「足使い」は、変わらずのテーマだと言うが、それ以上に、「バットに当たってワンバウンド目で『こういう打球が来る』と判断することが、まだできていない」と、秋季キャンプでの実戦練習の中で痛感。あこがれでもあり、目標とする源田壮亮が「振る前から(打球が)分かる」と答えているのをネットメディアで見聞きしたことからも、さらなるスキルアップの必要性を肝に銘じた。

動画の印象だけでなく


 また、もう一つ大きかったのが、実際に聞くこと、試すことの重要性に気付けたことだ。「ずっとインターネットばかりを見てきた人」と、自ら認めるように、これまでは、特に盗塁に関しては「細かな奥深さも知らずに、ただネットで見て、形だけをやっていたところもありました」。だが、3度の盗塁王を誇る松井稼頭央二軍監督などから直接レクチャーを受け、身につけたことで、技術が着実に上昇。29盗塁を成功させ、今季イースタン・リーグの盗塁王にも輝いた。

 打撃に関しても、動画で見ていた印象から、秋山翔吾に「トップでピタッと止まりますよね?」と質問してみたところ、「いや、全然動いているよ」と言われ、見た目と実際との違いに衝撃を受けたと明かす。インターネットの普及によって、昨今は動画サイトなどで超一流選手の練習法、打撃論、投球論などを簡単に学ぶことができるが、それを見て、知っただけで超一流選手になれるわけでは決してない。自分の目で、耳で、口で確かめ、実際に体で習得し、感覚を身につけなければ通用しないことを、身をもって実感した。

 11月23日から参加した『2019アジア・ウインターリーグ・ベースボール』(台湾)では、12試合に出場し、打率.389、2本塁打、9打点と、定評ある打撃面でポテンシャルをしっかりと証明した。

「僕が『空けさせる』くらいの気持ちで」


 契約更改の席では、球団から「セカンドで勝負してほしい」と発破をかけられた。来季は、不動のレギュラー中堅手・秋山翔吾が海外FAを宣言しており、移籍が確実視されている。それに伴い、今季二塁手として全試合に出場した外崎修汰が、内外野とも非常に高い守備力があるだけに、外野手として起用される可能性も十分考えられる。となると、二塁が空くという筋書きも成り立つことからも、定位置奪取のチャンスは大いにある。

 渡辺久信ゼネラルマネージャーも、「自主トレ、キャンプ、オープン戦をやってみないと、どうなるかはまだ全然分からない」とした上で、「ポジションがシャッフルされる状況になったときに、チャンスがあるのはセカンド。彼の本職はセカンドだと思うので、その場合はしっかり狙ってほしい」と、本人に伝えたという。また、「いろいろ悩んでいた部分もあるとは思うのですが、本来はしっかりと守れる選手。台湾では(打撃が)すごかったので、そういうところを生かしながら、守備でも自信をつけてやっていってもらえれば」と続け、大きな期待を寄せていた。

 山野辺本人も「外崎さんは、内野でも外野でも本当にすごい方。ハードルは高いですが、(二塁が)『空く』ではなく僕が『空けさせる』ぐらいの気持ちで、なんとか頑張りたいです」と、意欲満点だ。

 外崎だけに限らない。チームはコーリー・スパンジェンバーグ森越祐人(元阪神)と、いずれも二塁経験豊富な内野手を補強獲得した。来季西武のカギを握るかもしれない、熾烈な二塁レギュラー争いを山野辺は勝ち抜けるか。大いに注目したい。

文=上岡真里江 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング