読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。 Q.中学校で野球部のコーチをしています。プロ野球の試合などでピッチャーがアイシングをしながらヒーローインタビューを受けているのを見たことがありますが、投球後のアイシングの効果とはどのようなものでしょうか。また、アイシングをしない選手がいるとも聞きました。そのような選手はどうやって肩ヒジのケアをしているのでしょうか。また、日米で投球後のケアについて違いはありますか。(東京都・42歳)
A.アイシングの目的は炎症を抑え、血流を良くすること。私のおすすめのケアはスイメックス。高校生レベルにもぜひ
阪神時代の藪恵壹氏
まずアイシングについてですが、投球後、肩やヒジは熱を持っていますから、これを冷やしてあげることで炎症を抑え、細胞が壊れていくのを防ぐ目的があります。また、冷やすことで血管を縮ませ、これを外したときに一気に血管が広がることで血流を良くし、疲労を押し流す効果も期待できます。
日本では氷のうを装着して肩やヒジにはめられる優れた道具を使っていますが、メジャーではいまだにゲータレードのようなスポーツ飲料メーカーの大きめのバスタオルにクラッシュした氷をくるんで、肩やヒジに装着する原始的(?)なやり方でアイシングを行っている球団も多いようです。溶けた氷水でべたべたになりますが、これがアイシングを外す良いサインになっています。
質問の方がいうように、いまはアイシングをしない選手も増えてきました。それはアイシングと同様の効果を別の方法で補っているからです。例えば、登板後に冷たい氷の入った水風呂と温かいお風呂とを交互に繰り返し入り、熱を取り除きつつ、血流を良くする選手もいますね。アメリカでもホットプールとアイスプールがあって、交代浴をする選手もいましたし、アイスプールの中にキンキンになるまで入って、ホットプールで一気に血流を流す選手もいました。
私が現役時代に行っていたケアでとても効果的だと感じたのが、スイメックス(SwimEx)です。流れる水の抵抗を生かしてエクササイズ、リハビリができるプールで、多くのプロ球団の施設や大学のトレーニング施設、病院、スポーツクラブで利用されているものです。水から出たあとは体の疲労や老廃物が一気に流されたように体が軽くなりました。特に年齢が行ってからは回復にすごく役立って、私の場合は登板直後、アイシングをする前に入っていました。
阪神時代から(いまはクラブハウスにあるみたいです。私の時代は甲子園の近所の接骨院に通って入っていました)ですね。それまでは30分程度、バイクを漕いでいたんですが(有酸素運動ですね)、それを水中に変え、水流を受けながらエクササイズ(水中で汗をかくくらい、なかなかハードに行います)をすると、もう、水から出るとすぐにでも投げられそうな、そんな状態になりました。
メジャーの球場にはどこにでもあって、おかげで選手寿命が延びたと思います。おすすめですよ。
●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に
楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。
『週刊ベースボール』2019年12月16日号(12月4日発売)より
写真=BBM