週刊ベースボールONLINE

球界の論点

歯止めがかからない野球少年の減少。プロ・アマが意識共有した少子化への抜本的な対策が必須/球界の論点

 

すそ野の縮小傾向


プロ野球の観客動員は右肩上がりだが……(写真はマツダ広島


 2020年の球界はどうなるのか。今や日本だけにとどまらない競技となった野球は、平成から令和に変わり、新たな局面を迎えようとしている。

 東京五輪が開催される年を迎え、球界も呼応して大いに盛り上がりそうだ。昨年11月のプレミア12で世界一に輝いた稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンは、3位に終わった04年アテネ大会以来のメダル獲りに挑戦。金メダルなら84年のロサンゼルス大会以来の快挙となる。「ワンチーム」として日本を感動の渦に巻き込んだラグビー代表のような熱い戦いに期待したい。

 本場メジャー・リーグでは侍ジャパンでも活躍した面々の動向が興味深い。DeNAの主砲・筒香嘉智外野手がレイズに入団し、巨人のエース・山口俊投手が巨人からブルージェイズに移籍。西武からは安打製造機の秋山翔吾外野手と、日本が誇るトッププレーヤーが腕試しをする。ケガに泣かされた投打の二刀流、エンゼルスの大谷翔平が復活できるか、ヤンキースとの7年契約最終シーズンの田中将大のピッチングは――など見どころが満載だ。

 日本のプロ野球は、これまで通り活況を呈しそうだ。令和最初の昨年は、初めて入場者が1試合平均で3万人の大台を突破。セ、パ両リーグ全853試合は過去最高の2653万6962人を記録した。交流戦の1試合平均数も過去最高だった昨年の3万182人を上回る3万1110人と、年間を通じて盛況。球界再編で50年ぶりに楽天が新規参入した05年から1試合平均で30パーセント以上も増加しており、右肩上がりの傾向に変わりはない。開幕は例年よりも約1週間早くスタートして五輪期間中は公式戦が中断されるが、観客動員に影響はなさそうだ。

 興行面から見て、プロ野球は日本で最も成功したスポーツと言っていい。しかし、あぐらをかくわけにはいかない状況に置かれている。時代はどんどん移り変わり、それに対応するための創意工夫が不可欠となった。

 少子化に伴い、野球少年の減少に歯止めがかからない。野球人口の重要な基盤となる中学生の野球離れが特に激しく、日本中学校体育連盟によると、09年に約30万人だった軟式野球部員が19年には16万人台まで落ち込んでいる。ちなみに同時期のサッカー部員は約22万人から18万人台と、野球の落ち込みぶりが目立つ。すそ野の縮小傾向は、近い将来に必ず上のカテゴリーにも影響を与える。

 アメリカのプロバスケットボール協会(NBA)ドラフトで日本人選手として初めて1巡目指名を受け、ウィザーズで主力として活躍する八村塁は、小学生時代には野球少年だった。だが、ケタ外れに速く重い八村の球を捕球できる選手がおらず、いつの間にか野球からバスケットボールに転向したというのは有名な話だ。

柔軟かつアグレッシブな開拓精神


 類い希なる身体能力とセンスを持つアスリートの卵を、いかに野球に引き込めるか。子どもたちに魅力あるスポーツとして選択してもらうための環境の整備は、野球に携わる大人の責任だ。つい最近まで少子化問題を対岸の火事としていた12球団だが、やっと危機感を口にし始めた。プロ・アマが意識共有した少子化への抜本的な対策が、令和の初仕事となる。

 野球人口の先細りとともに考えなければいけないのが、人々の嗜好の多様化。スマートフォンなどモバイル端末を中心としたインターネット関連の急激な技術進歩やBS、CS放送による多チャンネル化で、野球以外のコンテンツも簡単に手に入る世の中になった。選択肢が少なかった昭和の「巨人、大鵬、玉子焼き」の発想では取り残されるだけだ。

 チケット収入だけではなく、マーケティング戦略によるファンと収益の拡大への考えをより発展させる必要もある。プロ野球ではSNSを利用したファンも参加できる双方向型のサービスなどが浸透しつつあるが、より時代を先取りした新たな発想が必要となりそう。プロ野球にとって、令和は柔軟かつアグレッシブな開拓精神が試される時代となりそうだ。
 
写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング