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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

注目度No.1佐々木朗希の「育成法」に提言したい3つのこと

 

周囲は期待しないこと


ロッテのドラフト1位・佐々木朗希。いよいよプロ野球人生がスタートする


 2020年が幕を明けた。ルーキーは間もなく、新人合同自主トレを始動させる。何と言っても注目度No.1は、ロッテのドラフト1位・佐々木朗希(大船渡高)だ。連日、練習会場には多くのメディア、ファンが詰めかけるだろうが、高校2年秋から取材してきた視点から、提言しておきたいことが3つある。

 まずは、慌てないこと。佐々木は生まれて初めて、故郷・岩手から東京に出てきた。しかも初の寮生活(さいたま市)で少なからず、不安はあるはずだ。高校3年間で甲子園出場はなく、県外に出たのは合宿、練習試合、高校日本代表候補合宿を除いて、高校日本代表として出場したU-18W杯(韓国)での約20日間が最長である。

 大船渡高での練習取材は学校方針により、すべてNGだったため、練習から多くの視線を浴びるのは、違和感を覚えるはず。練習とはいえ、人から見られれば、力が入ってしまうのがアスリートの本能。周りの新人たちはそれこそ、キャンプ一軍入りを目指して初日からエンジン全開でアピールしてくるだろうが、佐々木はマイペースを貫くべき。まずは、取材を含め、プロの流れを体に馴染ませることに専念したほうが良い。その理由は、後述する。

 自身が慌てないことに付随して、周囲は期待しないこと。ポテンシャルは高いが、おそらく基礎体力は成長段階と予想される。長距離走などで競争すれば、優劣がはっきりと出る。過去の他球団の自主トレ報道において、ロングランで順位が下になった際は、やや厳しい評価を下していた。令和の怪物・佐々木には無縁かもしれない。だが、高校時代の練習を見たことがないだけに、どれほどの持久力なのか、想像もつかない。逆に興味はあるが、野球の技術と持久力は必ずしもイコールでない。仮に最下位でゴールしても、温かく見守ってほしい。

 最後にブルペンに入らないこと。沿岸部に位置する大船渡の寒さは、半端ないと聞く。意識が高い佐々木とはいえども、1月において肩・ヒジはまだ調整段階のはずだ。新人合同自主トレでブルペン入りすると、大きく取り上げられる傾向にあるが、佐々木はキャッチボールで十分だ。「健康」に投げられることを披露するだけで良いのだ。

プロの雰囲気に慣れることが先決


 振り返れば、昨年も“オレ流”だった。高校野球の対外試合解禁は3月8日であるが、佐々木の初登板は同31日(対作新学院高)までずれ込んだ。昨年1年間、この練習試合が「ベスト投球」と語っていたことからも、オフシーズンの過ごし方には気を使っている。

 このスロースターターぶりを見ても、1月にブルペン投球とは、まったくの論外。あくまでも本人の意思も大事にしていきたいが、担当スタッフも制止すべき。温暖な2月1日のキャンプイン以降、徐々に投げ始めていけば良いと思う。

 この1月はとにかく、プロの雰囲気に慣れることが先決だ。甘やかし? 過保護? 何を言われても、気にすることはない。佐々木に関しては、そこまで注意深く見守る必要がある。投球フォームを含めて、可能な限り、本人の意向を尊重する。佐々木がサポートしてほしいとのシグナルを出すまでは「放牧」がベスト。ただし、担当コーチとは日々、コミュニケーションを取ることだけは怠らないでほしい。あるスカウトがこう言っていた。「ドラフト1位なんだから、あえて、こちらが手を加えることはない。それだけの好素材で、最上位の評価をしたんですから」。選手育成に、マニュアルは存在しない。佐々木に関しては、教える側の「我慢」も求められる。

文=岡本朋祐 写真=桜井ひとし
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