昨季、パ・リーグMVPに輝いた西武・森友哉がプロ入り後にかけられた言葉で忘れられないのは
秋元宏作バッテリーコーチからの“発破”だったという。
「秋元さんが一軍のコーチになった年(2017年)でしたが、シーズン前に『今年は正捕手で頑張れ。正捕手を死ぬ気で獲りにいけ!』と言ってもらったんです」
それまでのプロ3年間は打力を生かすために捕手としての出場は少なかったが、プロ入り当初からの夢は“打てる捕手”。理想を成し遂げる思いが、秋元コーチの言葉でさらに強まった。しかし、その翌日の3月5日。WBC強化試合のキューバ戦に出場した森は左ヒジに死球を受けて骨折し、実戦復帰は8月とシーズンの大半を棒に振ってしまった。
だが、再点火した理想への思いが弱まることはない。翌18年には74試合、19年は126試合でスタメンマスクをかぶり、チームの連覇に貢献。特に昨季は打率.329、23本塁打、105打点をマーク。捕手として史上4人目の首位打者を獲得するなど打撃でも大きな飛躍を見せた。
「バッティングに関しては目標以上のものが達成できた思いはあります。シーズン当初、目標は3割20本塁打でしたから。ただ、やっぱり守りに関して言うと、まだまだエラーも多いですし、ゲームを作れたことも少ない。打撃陣に助けられた部分が大きかったですから」
理想へは道半ばだが、年俸は2億円(推定)に達し、選手会長にも就任した。当然、2年連続クライマックスシリーズ・ファイナルステージで
ソフトバンクに敗れた悔しさもある。新シーズンへの発奮材料は多々ある。
「責任感もありますし、より一層、チームを引っ張っていかないといけない。山川(穂高)さんともそういう話もしていますし、やらないといけないことはたくさんあるんじゃないかと思います」
理想にどこまで近づけるか。2020年の森に大きな期待をかけたい。
文=小林光男 写真=BBM