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箱根駅伝から学んだ「4年生力」。プロ注目左腕、早大主将・早川隆久が目指す「強い集団」

 

心が熱くなった主力選手の献身的な背中


早大の151キロ左腕・早川は練習始動日となった1月5日、安部寮で主将として2020年の決意を語った


 1月2、3日はテレビにクギ付けとなった。

 早大の主将・早川隆久(新4年・木更津総合高)は毎年、箱根駅伝を観戦するのが年明けの過ごし方。父・徳治さんが日大陸上競技部OB(専門は100メートル、100メートル×4リレー)だったこともあり、陸上競技に興味があった。

 しかし、これまでの視点とは大きく変わった。

 早稲田大学野球部は100人以上の大所帯である。創部1901年という伝統あるチームを背負う立場として、リーダー目線になった。「正月の風物詩」から学んだのは「4年生力」だった。

「早稲田の2区の太田(智樹、4年・浜松日体高)さんは、主将として意地の走りでした。主将としてあるべき姿を見せてもらいました」

 首位から17秒差の1区6位でたすきを受けると、トップの青学大とわずか1秒差の2位に順位を押し上げ、結果的に2年ぶりとなるシード権(7位)の流れを作った。

 さらに、話は熱気を帯びる。

「青学大は5区で竹石(尚人、4年・鶴崎工高)さんが故障で走れず、代わりに2年生の飯田選手(貴之、八千代松陰高)が『4年生のために頑張る!』と力走しました。これまでの背景があったからこそ、後輩からの発言であり、自己犠牲の精神。チーム力の高さを感じました」

 竹石は自ら出場辞退を申し入れ、レース中は給水係として激走する仲間たちをサポート。主力選手の献身的な背中が早川の心を熱くしたのだ。

「4年生、特に主将はチームに与える影響力が大きい。昨年12月、早明戦のラグビーを見ても主将・齋藤さん(直人、4年・桐蔭学園高)も体全体でチームをけん引していた。主将が頑張らないと、良い結果は出ないと思いました」

 そして、自身のチームに置き換える。

「強い集団を作りたい」

野球以外の部分から見直し


 昨年11月の新チーム結成以降、主将・早川は野球以外の部分から再度、見直しを図った。

「日常からの練習態度、生活にも気遣い、気配りができる選手は、野球の結果にもつながると思います。早稲田大学野球部としての存在意義を重要視しています。自分たちはプロではない。自分たちは学生なので、泥臭く、土台を固めていかないといけない。野球に対する姿勢を磨きながら、結果的に日本一の集団にしたいです」

 最速151キロのプロ注目左腕。入学以来、リーグ優勝の経験がなく、通算7勝12敗と黒星が先行している。とはいえ、木更津総合高時代は3度の甲子園に出場し、高校、大学を通じて侍ジャパンに名を連ね、潜在能力は誰もが認めるところ。1月5日の練習始動日には巨人西武ソフトバンクロッテ日本ハムのスカウトが視察に訪れるなど、注目度はさらに増していくはずだ。

 箱根駅伝を通じて、大学スポーツの神髄を学んだ一方で、年末には最愛の祖母が他界した。

「甲子園、神宮にも応援に来てくれました。病院へお見舞いに行くと『社会人に出るまでは見届けたい』と言っていたんです……。結果を残して、良い報告をしないといけない」

 現状、卒業後の進路希望については「7割はプロ、3割は社会人野球」と決めかねているが、すべては今春次第だ。「学生相手に負けているようでは、プロでも通用しないと思っている」と、自らでハードルを上げ「無敗」を目標に掲げている。学生ラストシーズンにかける覚悟がみなぎる投手兼主将は、チームのためだけに動く。4年生としての意地をマウンドで体現していく。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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