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大学野球リポート

「プロ志望」を表明した個性あふれる亜大三人衆・内間拓馬、矢野雅哉、平内龍太

 

井端以上の能力


亜大は1月7日に2020年の練習を始動。左から内間拓馬投手、主将・矢野雅哉内野手、平内龍太投手は、大学卒業後の「プロ志望」を表明した


 不退転の決意である。

 1月7日、亜大は東京都西多摩郡内の同大学グラウンドで始動。個性を持った3選手が大学卒業後の「プロ志望」を表明した。

 この日の朝、バリカンで髪の毛を刈り上げて、なおも短く剃り、気合を体現したのは主将・矢野雅哉(新4年・育英高)である。

 50メートル走5秒9の俊足で、遠投128メートルの高いポテンシャルが武器だ。高校2年冬、ある用具メーカーが行った測定では「全国1位」の強肩ぶりを示したほどで「自分よりも強い人は見たことがない」と語る。大学入学後も試しに投げてみると、中堅120メートルを越え、バックスクリーンに当てた逸話もある。

 潜在能力を生かした遊撃守備も鉄壁で、亜大・生田勉監督は「(同大学OBの)井端(弘和、元中日ほか)以上じゃないですか。ケガをしない。たくさん練習ができますので、息の長い選手になるのでは」と認める。昨秋は東都大学リーグで首位打者を獲得。左打席からミート力ある打撃もセンス抜群だが、まずは「守備でチームを支えていかないといけない」と、チームリーダーらしくフォア・ザ・チームに徹していく。

「井端さんは大きな目標ですが、マネをしていたらそこで終わってしまう。超えるだけの努力をしていきたいです」

球速以上にキレがある直球


 150キロ右腕・内間拓也(4年・宜野座高)は昨年1年間で、大きな飛躍を遂げた。昨年2月の鹿児島キャンプで、体重移動をメーンにフォーム修正。ロッテ二軍との交流試合で5回無失点と自信を深めると、春のリーグ戦では開幕投手に指名され、主戦投手として活躍した。大学日本代表として日米大学選手権にも出場。しかし、急激な環境の変化に戸惑い、第4戦で救援も、一死も奪えず打者3人で降板した。

「有名人ばかりで……。圧倒されました。でも、自分自身にとっては良い経験になりました」

 球速表示以上にキレのあるストレートがストロングポイント。プロでも一流レベルと言われる2500回転の球筋の良いストレートで空振りが取れ、タテに大きく曲がるカーブ、スライダー、ツーシームと変化球も器用に扱う。「少しでも可能性があるのならば、プロへ行きたい」。高校時代からドラフト候補で、社会人も選択肢にあったが「投手育成に長け、プロを多く輩出している」と亜大の門をたたいた。3年時は春、秋と開幕投手を務めており、今春も3季連続での大役を目指す。勝利数よりも防御率1点台で、チームの優勝に貢献していきたいと考えている。

無限の可能性が詰まる大型右腕


 3人目は152キロ右腕・平内龍太(4年・神戸国際大付高)である。兵庫県明石市へ帰省した年末年始、モチベーションが上がる出来事があった。平内はソフトバンク永井智浩編成育成本部長を叔父(母・恵三さんの兄)に持つ。親戚が集まった場で、こんなやり取りがあった。

「どうするんや?」

「プロに行きたいです」

「見とったるからな」

「よろしくお願いします」

 もちろん、ドラフト対象選手は全員が平等であり、平内にもプロの厳しい視線が注がれる。父・大介さんは元高校球児、母は元・バレーボール選手とアスリート一家に育ち、186センチ94キロの大型右腕には無限の可能性が詰まっている。

「おじさんにあこがれてやってきて、追いかけてきた存在です。誰が見ても『力があるな』という評価を受けて、プロへ入りたいです」

 高校3年時にプロ志望届を提出したが、無念の指名漏れだった。あの悔しさを忘れないために、グラブの中には「Re Start H28.10.20」と4年前のドラフトの日付が刺繍されている。

「1位で行くつもりで取り組んできました。その気持ちは変わっていないですが、今は大丈夫かな? と。不安な部分は少なからずあります」

 1年秋からリーグ戦のマウンドに上がってきたが、3年秋は登板なし。部内規則違反により、大学から1シーズンの出場禁止処分を受けていた。この間は自らを見つめ直すともに、トレーニングに専念し、体重は4キロ増の94キロ。下半身が安定し、冬場も週5日、平均150球の投げ込みを継続。春までには155キロを計測し、かつてのソフトバンクのエース・斉藤和巳氏のように、チームを背負う存在になりたいと語る。

「野球が続けられなくなるかも? と……。チームメートからも『変わったな』と、周りに認めてもらえるような行動をして、この1年をかけて、チームに恩返しをしたい思いが強いです」

 実績十分の3人。すでに社会人球界から熱心な誘いがあるが、現状では「プロ一本」。自ら進路を切り拓くために、真摯に白球と向き合う。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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