週刊ベースボールONLINE

プロ野球回顧録

90年代ヤクルトBEST9は? “弱者”の野球を貫き強者となった栄光の10年/プロ野球回顧録

 

近くて遠い90年代プロ野球――。いまから20年以上前、各球団ではどのようなことが起こっていたのか。プロ野球が熱かった90年代を12球団ごとに振り返る。

「ID野球」で躍進


90年代に7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた古田(右)。野村監督の起用に見事に応えた


<IMPORTANT DATA>

 聞き慣れない造語の頭文字に由来する言葉、「ID野球」を掲げて野村克也監督がヤクルトの監督に就任したのは、1989年10月のことだった。

 80年の2位を最後に9年連続Bクラスに低迷していたヤクルト。しかし、その一方で87年からの3年間は関根潤三監督のもと“のびのび野球”でファンの支持を集めていた。

 弱いが明るい。チームは特異な存在感を発揮していた。そこへ乗り込んできた球界きっての頭脳派は、徹底的なミーティングで選手の意識改革を図っていく。

 一方、グラウンドでは戦力の見直し、中でもセンターラインの強化に着手する。80年代後半に活躍した栗山英樹に代えて柳田浩一をセンターに起用。さらに、89年の新人王・笘篠賢治に代えてセカンドには捕手の飯田哲也をコンバート。そして、扇の要には新人の古田敦也を抜擢した。

 果たして、指揮官の眼に狂いはなかった。この年、柳田はゴールデン・グラブ賞を獲得。野手としての適性を見抜かれた飯田は91年にセンターへ再コンバートされ、リーグを代表する外野手に成長。古田の“その後”については多くを語るまでもないだろう。

 根幹部分を固めたチームは、90年こそ5位に終わったものの、翌91年は3位に躍進。古田が首位打者、広沢克己が打点王に輝き、池山隆寛も32本塁打を放つなど打線も充実。6月に記録した球団新の12連勝時には長嶋一茂のバットも派手に火を噴いた。また、投手陣では西村龍次川崎憲次郎岡林洋一の3人の若手が2ケタ勝利を記録。確かな手ごたえと勢いを残して、野村ヤクルトは2年目のシーズンを終えた。

人間臭いドラマを内包した栄光


90年代に3度、日本一に輝いた(写真は95年の胴上げ)


 そして、チームは「黄金時代」を迎えることになる。92年のリーグ優勝を皮切りに93、95、97年と1年おきの日本シリーズ制覇。90年代のプロ野球界を席巻した「ID」の二文字。だが、その栄光は同時に人間臭いドラマも内包していた。

 92年。阪神との壮絶なデッドヒート。残り6試合で首位を明け渡したあと、チームを救ったのは椎間板ヘルニアから復活した荒木大輔だった。

 93年。伊藤智仁、鮮烈なるデビューも右ヒジの故障で戦線離脱。前年Vの立役者・岡林も右肩を痛めた。しかし、その一方で前年の日本シリーズを棒に振った川崎が復活。日本シリーズでは涙のMVP。

 95年。広沢が巨人にFA移籍。93年に5本のサヨナラ弾を放ったハウエルも巨人へ。主砲2人をライバル球団に譲った形となり、開幕前には最下位の可能性も指摘されたが、この危機を救ったのがオマリー、ミューレンの両外国人。それぞれ阪神とロッテを解雇されたのちに移籍してきた「再生組」だった。

 97年。野村再生工場の集大成。前広島小早川毅彦、開幕戦で奇跡の3連発。投手陣ではダイエーから移籍2年目の田畑一也がチームトップの15勝。近鉄から移籍3年目の吉井理人も13勝。石井一久が95年のブロスに続いてノーヒットノーランを記録すれば、“プリクラ男”のホージーがまさかの本塁打王。前評判は95年同様に低かったが、終わってみれば開幕から1度たりとも首位の座を明け渡すことのないパーフェクトな優勝だった。

 日本シリーズの主役は高津臣吾。93年第2戦から世紀をまたいで01年第5戦まで、登板した11試合は無失点の力投。

 十分な戦力補強がままならない“弱者”の立場でも、ち密なデータ分析とそれに基づく実践力、および適材適所の配置によって活路を開く。その精神はいまのヤクルトに受け継がれているのだろうか――。

1990年代ヤクルトBEST9


ヤクルト・石井一久


■1990年代ヤクルトBEST9

投手 石井一久 92〜99年在籍 
188試合、56勝31敗1セーブ、防御率3.55

捕手 古田敦也 90〜99年在籍
1219試合、1283安打、打率.295、127本塁打、624打点

一塁手 広沢克己 90〜94年在籍
655試合、720安打、打率.286、128本塁打、423打点

二塁手 土橋勝征 90〜99年在籍
810試合、639安打、打率.272、57本塁打、281打点

三塁手 ハウエル 92〜94年在籍
339試合、336安打、打率.293、86本塁打、231打点

遊撃手 池山隆寛 90〜99年在籍
1081試合、1058安打、打率.271、206本塁打、642打点

外野手 荒井幸雄 90〜95年在籍
550試合、442安打、打率.268、30本塁打、138打点

外野手 飯田哲也 90〜99年在籍
1080試合、1025安打、打率.274、39本塁打、295打点

外野手 稲葉篤紀 95〜99年在籍
478試合、425安打、打率.287、47本塁打、203打点

写真=BBM

関連情報

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング