2020年シーズンのスタートに向けて、
アダム・ジョーンズ(
オリックス)、
ヘラルド・パーラ(
巨人)など、各チームが強力な助っ人外国人を獲得している。こうした外国人助っ人の登録名は、ファーストネームかファミリーネームが用いられるのがほとんど。しかし、中には本名とは異なる名前で登録されることもある。今回はそうした「本名とまったく違った助っ人の登録名」を紹介する。
●ブーマー(阪急・オリックス:1983〜1991年、ダイエー:1992年)
本名とまったく違う登録名の筆頭が、1980年代から1990年代前半にかけて活躍したブーマーだ。ブーマーの本名は「グレゴリー・デウェイン・ウェルズ」で、ブーマーなんて名前はまったく入っていない。実はこの登録名はアメリカ球界時代のあだ名。本塁打を連発したことで「ブーマー」(ブームを呼ぶ男)と呼ばれるようになり、これを日本で登録する際に用いたのだ。その名のとおりブームを呼ぶ活躍を見せた。
●バンプ(阪急:1983〜1984年)
ブーマーと同じタイミングで阪急に入団したバンプは、本名がエリオット・テイラー・ウィルス。ファミリーネームの「ウィルス」が、ブーマーの「ウェルズ」と似て紛らわしいからという理由で、アメリカ時代からのあだ名だったバンプで登録したという。3Aだったブーマーと比べてバリバリのメジャー・リーガーで、父親もメジャー・リーガーというエリートだったバンプ。そのプライドが邪魔をしたのか、ほとんど活躍できずに2年で帰国した。
阪急・アニマル
●アニマル(阪急:1986〜1987年)
1986年に阪急に入団し、主に抑えとして起用されたアニマル。その名前のとおりの荒々しいパフォーマンスで人気を集め、引退後は亜仁丸(あにまる)レスリーの芸名でタレントとしても活動した。もしかすると、『風雲!たけし城』などの人気番組での活躍のほうが印象深いという人もいるだろう。そんなアニマルの本名はブラッドリー・ジェイ・レスリー。本名とはまったく異なる登録名だったのだ。
●ディンゴ(中日:2000年)
2000年に中日に入団し、まったく活躍できずに1年目の8月に退団したディンゴの本名は、デビッド・ウェイン・ニルソンとまったく違っていた。実は、オーストラリア出身ということから、オーストラリア大陸だけに生息するイヌ科の動物「ディンゴ」にちなんで、この登録名にしたのだ。ただ、ディンゴのようにタフなプレーは披露できずに終わってしまった。
●王天上(南海:1979〜1980年)
漢字三文字なのでアジア系の選手かと思いきや、アメリカ生まれのアメリカ人選手で、本名はフランク・
ジョセフ・オーテンジオ・ジュニア。「世界のホームラン王である
王貞治より上の成績を残してほしい」というチームの首脳陣が、ファミリーネームのオーテンジオをもじって「王天上」(おうてんじょう)と名付けたという。結果的になんとなく
ヤンキーの語呂合わせのような登録名になり、成績も王を超えることはできなかった。
●マニー(大毎:1962年)
本名はフランク・エドワード・マンコビッチ(Frank Edward Mankovitch)。ファミリーネームに日本では下品な意味にとらえられかねない単語が含まれているため、短縮形にするわけにもいかず、仕方なく当たり障りのないマニーで登録したといわれている。それならフランクでもよかったのではないだろうか。肝心のプレーは本名ほどのインパクトは残せず、12試合に登板して1勝も挙げることができずに1年で退団した。
こうして振り返ってみると、1980年代の阪急は一風変わった外国人選手の登録名の宝庫だったようだ。2019年オフに新入団した外国人選手たちは、果たしてどのような名前で登録されるのか、注目してみてはどうだろうか。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM