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週べ60周年記念

近鉄・太田幸司の師匠は同じ新人の南海・佐藤道郎?/週ベ回顧

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

今度はオートレースで逮捕者


表紙は近鉄・太田幸司



 今回は『1970年5月11日特大号』。定価は90円。
 
 4月24日の東映戦(後楽園)で南海・野村克也が、日本球界初の通算450号本塁打を達成。
 めでたいことだが、球が飛び込む外野スタンドが悲惨だ。大げさな表現ではなく、本当に人が数えるほどしかいかなかった。
 試合が1対3と敗れたこともあり、インタビューでは兼任監督野村は記録には触れず、
「勝てそうに思えなかった。気のゆるみだ」
 と反省しきりだった。

 近鉄・太田幸司ばかりがもてはやされるが、ほかの新人も頑張っている。
 その一人が強心臓右腕として売り出し中の、日大出身の南海・佐藤道郎。実は大学時代、コーチとして三沢高に行き、太田を指導したことがある。
「太田はいいマスクをしているし、少年のあどけなさがある。俺がこの世界にいなかったら、そこらのミーちゃん、ハーちゃんと同じように太田ファンになっていたかもしれんな」
 と佐藤。彼について首脳陣は「リリーフで自信をつけさせてから先発へ」という方針だった。
 この時点では開幕から9試合中4試合に登板。7イニングながら無失点だ。それでも佐藤は、
「僕の実力でこんな成績が挙げられているとは思っていません。すべて野村さんのリードのおかげです。ただ、僕は練習中はチームの中で一番へたくそでも、マウンドに立ったときは、俺よりうまいもんはいないんだというつもりでやっています」

 佐藤は4月14日の阪急戦でプロ初勝利(救援登板)を挙げたが、そのときの敗戦投手が2年目のアンダースロー、山田久志だった(契約は前年後半)。野村の2ランを浴び、これがこの年の2敗目。ただ、勝気な男はへこたれない。
「僕はこのくらいのことではくじけません。あすのマウンドの糧にしたいと思います」

 また、やな話を書く。
 4月23日、今度はオートレースの八百長で中日田中勉、元大洋・高山勲、さらに元西鉄・永易将之と西鉄の間で交渉役となった元暴力団員・藤縄洋孝が逮捕された。
 田中がある週刊誌に「八百長をしている」と書かれ、名誉棄損で告訴。それで警察が動いたことで、逆にオートレースの件がばれたという、なんとも締まらぬ事件だった。

 八百長疑惑があった6選手を守り続ける西鉄・稲尾和久監督だが、東京遠征のメンバーから与田順欣益田昭雄を外した。稲尾はあくまで「調子が悪いからだ」とだけ言っている。

 新聞では朝日新聞が黒い霧を徹底的に追及。一方で以前書いた帝京商工高が高野連を告訴したという件は、読売のスクープだったらしい。
 週刊誌、新聞社間の思惑……。
 野球界はノーガード状態で打たれまくっている。すでに動かしようがない過去の話だが、つい思ってしまう。
 もはや、村の論理では解決できない。誰かリーダーはいないのか。このままでは野球界は大変だぞ、と。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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