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2020センバツ

“3分30秒”が明暗を分ける!? センバツ「21世紀枠」選考の舞台裏

 

1秒たりともムダな時間がないように


1月24日の選抜選考委員会は午前9時、全国9地区から推薦された「21世紀枠候補校・推薦理由説明会」から始まった


 3分30秒が明暗を分けるのか――。

 第73回(2001年)から創設されたセンバツの「21世紀枠」。今回でちょうど20回目となった選抜高校野球大会における「特別枠」(今回は3校)だが、一般選考(29校)とは別に21世紀枠特別選考委員15人が選考を進める。

 1月24日の選抜選考委員会は午前9時、全国9地区から推薦された「21世紀枠候補校・推薦理由説明会」から始まる。

 9地区理事、もしくは当該都道府県高野連の理事長に与えられたプレゼンの時間は1校、3分30秒と決まっている。3分になると一度ベルが鳴り、時間制限となった時点で再度、ベルが鳴って終了。公正を期しているのだ。

 かつては、思いのままを話す高野連関係者もいたが、最近は全員が原稿を準備。3分30秒以内で収まる内容を用意して、1秒たりともムダな時間がないようにスピーチする。

 今年は抽選により西の4校(伊香、城東、平田、本部)から始まり、次に東の5校(敦賀、磐城、宇都宮、近大高専、帯広農)と粛々と進行した。学校の歴史、野球部の取り組み、地域との関係性などを説明していくが、やはり、インパクトのある内容のほうが選考委員の耳に届く。つまり、どこにでもある一般的な話題では、心つかむことはできない。

 スピーチが終わると、選考委員から高野連役員へ約30分の質疑応答の時間がある(報道陣は見学するのみで、質問はできない)。そこで、選考委員がどの学校に興味をしているのかが分かる。最も集中したのは近大高専(三重)だった。これまで高専からの甲子園出場校はないため、馴染みがなかったのも事実。今回は選考委員から最多4人の質問が出た。

 もちろん、質問の数によって、選出が有利に働くわけではない。選考委員には事前に選考理由書や新聞記事らの資料が配布。この日の説明会後は「21世紀枠特別選考委員会」により約1時間にわたり議論し、3校が決定した。

 結果的に平田(島根)は「野球の普及活動」、帯広農(北海道)は「農業高校における創意工夫」、磐城(福島)は「台風19号からの困難克服と文武両道」と、それぞれの特色が決め手となった。補欠校は伊香(滋賀)と近大高専(三重)である。

質疑応答で捕捉


 果たして「プレゼンテーション力」が21世紀枠の選考で、どれほどのウエートを占めているのだろうか? この日の選考委員長である日本高野連・八田英二会長は「そこで、すべてが決まるわけではありません。ただ、Q&Aによりはっきりし、(資料を見た上で)再確認するのは意味がある」と見解を示した。

 3分30秒では、すべてをアピールするには時間が足りない。そこで質疑応答で補足することによって、疑問が解決され、説明も加えられる。やはり、文字情報だけではなく、生の声のほうが説得力はある。各9地区とも愛着たっぷりのスピーチから、地元の空気感が伝わり、高校球児の日頃からの取り組みが目に浮かんでくる。

「一般選考枠」は極端な話、試合での結果がすべてで「地区別小委員会」は報道陣に非公開。一方、野球以外も評価対象である「21世紀枠候補校・推薦理由説明会」こそが、約7時間の及ぶ選抜選考委員会における醍醐味だ。さまざまな苦労と努力を経て、夢舞台をつかんだ3校。春夏とも甲子園大会は常連校が増えている中で、フレッシュな3校には爽やかな戦いを期待したい。それが、センバツの「21世紀枠」の果たすべき使命だ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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