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球界の論点

王貞治も「16球団に」――避けられないプロ野球の球団増/球界の論点

 

過去にもあったエクスパンションを求める動き


ソフトバンク・王球団会長


 プロ野球でエクスパンション(球団拡張)の話題が再燃している。ソフトバンクの王貞治会長が、本拠地・福岡の民放テレビでの新春特別番組で、「野球界のためには、球団数は現在の12よりも16が望ましい。あと4つ新しい球団が誕生してほしい」と発言。球界で最も影響力のある重鎮の提言に、関係者は興味を示している。

 王会長の持論は「チームは少しでも多いほうがいい」だ。野球普及の頼みの綱となる五輪は東京で3大会ぶりに復帰したが、再び除外されることが決まっている2024年パリ大会以降は不透明。少子化による野球人口減少の危機が叫ばれる中、最高峰レベルのプロ野球の拡大を図ることが受け皿の強化となり、球界の発展にもつながるという思いがある。

 同会長はセ、パ両リーグが実施しているクライマックスシリーズ(CS)についても触れている。「12という数字だから、変なやり方をしていると言われる」と主張。現行方式では、各リーグ6球団の半分にあたる上位3チームがCSに進出可能。優勝を逃したチームが日本シリーズに出場するケースが少なからず発生し、常に内外から賛否両論を呼ぶ状況を以前から憂慮していた。

「下克上としてのドラマが魅力」とするファンの声もあるが、一方では勝率5割にも満たないチームが日本一になるなどの現行ルールは「理不尽」だと否定的な意見もある。王会長はセ、パの各リーグをそれぞれ2球団、計16球団に増やし、その上でプレーオフの方式を見直したほうが整合性は保たれ、より周囲の支持を集めると考えているはずだ。

 エクスパンションを求める動きは、過去に何度も巻き起こっている。6年前、自民党の塩崎恭久政調会長代理(当時)が、政府の成長戦略に向けた党側提言として、球団数を12から16と拡大する構想を明らかにした。

 試合数や観客動員数の増加を図り、地域振興に結び付ける改革案として、セ・パ両リーグはそのままに、各8球団が東西2地区に分かれてプレーオフを争うなど球界再編の案を提示。新球団の本拠地についても、「静岡県、北信越、四国、沖縄県などに空白地域がある」と具体的に列記した。当時、この提言には財界や自治体の関係者も深く関与しているとささやかれ、地域活性化を図るための奥の手として期待された。

プロ野球は魅力のあるビジネス


 球団増が実現しなかった理由は、主に2つある。球団の母体となる企業が集まらなかったことと、プロ野球側が新規参入に否定的だったことでうやむやになったからだ。

 ソフトバンク、楽天DeNAなど新たな分野を切り開いた企業が参入してプロ野球を活性化させたように、新興勢力の柔軟かつ大胆な発想と行動力はあなどれない。球界は今こそ、フレッシュで柔軟な発想を持つ経営者に注目すべきだろう。

 18年夏、ファッション通販サイトZOZOTOWNの創業者、前澤友作氏がツイッターで「プロ野球球団を持ちたい」と発信し、注目を集めた。インターネット業界やAI(人工知能)産業など時代の最先端を走る企業は、資金力もありビジネスの感覚に長けている。伝統を誇る巨大な老舗企業はサラリーマンの社長が多く、球団参入に至るまでに時間がかかるが、自ら企業を興した経営者はトップダウンで決断が早い。20世紀は球団保有を単なる広告塔と位置付けていた企業もあったが、令和の時代では魅力のあるビジネスとして考える若き経営者が多い。

 昨秋、沖縄県の地域密着型プロ野球球団として琉球ブルーオーシャンズが立ち上がり、将来的な日本野球機構(NPB)の加盟を希望。全国でエクスパンションへの盛り上がりを見せている。保有の持続制を保てるかなどのNPBの審査基準は大事だが、参入のネックになっている総額30億円もの加盟金などの見直しをすべき時期が来た。

 16の球団増は第三者の提言とは違い、王貞治というプロ野球を支え続けてきたビッグネームの発言だけに重みがある。これまで時代の鑑となり続けていたプロ野球のさらなる隆盛のためにも、門戸の開放は避けられない。

写真=BBM
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