前例のない新人・江川の欄
2月12日発売の最新名鑑号
2月12日、本誌恒例の選手名鑑が発売される(490円)。2020年の特徴は思い切って通常連載をすべて休載し、名鑑ページを大幅増としたこと。顔写真の大きさも4倍近い(当社比)。
選手名鑑は週べのいわば“大看板”企画で、1946年創刊の月刊ベースボールマガジン時代からスタート(おそらく52年から)し、1958年創刊の週刊べースボールでも、もちろん継承され、1年も欠かさず続いている。
発売記念企画として、前回は
巨人・
長嶋茂雄の新人年を紹介したが、今回は1979年の名鑑を紹介してみよう。
いわずと知れた江川事件があった年だ。
前年のドラフト会議前日に「空白の1日」で巨人と契約した江川卓。もちろん、認められずに翌日、巨人がボイコットしたドラフト会議では
阪神が交渉権を獲得していた。
今回は、この事件を追う企画ではないのであっさりいく。
事態は二転三転したが、1月31日、阪神と契約成立。その日のうちに入団契約書をセ・リーグに提出し、受理された。さらに2月1日の午前0時18分から記者会見が行われ、巨人・
小林繁と江川のトレードが発表されている。
日本中が騒然となった事件だが、この企画内での問題は、編集部がどう対応したか。
当時、本誌の選手名鑑は基本的に前年の写真を使い、新しい選手のみキャンプ序盤で狙って入れていた。
2月26日の名鑑号を見ると、巨人の「30」に江川はおらず、阪神の「19」には小林が入っていた。
「あえて意地を見せ、江川を入れなかったのか」
と一瞬思ったが、江川は投手欄の最後に背番号未定で入っていた。巨人の帽子をかぶっていたが、これは合成だろう。
当時の週べの名鑑は全員の写真が入っているわけではなく、選手の寸評もない。これでは紹介しても面白くないと思い、並行して発売していた月刊のベースボールマガジンを見ると、こちらでは別冊付録として名鑑がついており、今の名鑑のように趣味、さらに記者による寸評に加え、本人の抱負まで入っていた。
ただ、ここでも背番号が空欄の江川は別だ。
寸評欄は「注」と書いたあとにこうある。
この名鑑は年間を通じて観戦用に作成しました。2月8日のプロ野球実行委、2月28日のオーナー会議で4月7日以降の巨人へのトレードが承認され、開幕日に巨人支配下選手に登録されることになります。
ついでだから、この年入団の大物、
ロッテの落合博満も見てみる。
趣味の欄にレコード鑑賞、映画(洋画)観賞とある。落合の映画好きは有名だ。
本人の抱負は、
全日本の三番打者に恥じないよう1日も早く一軍ベンチ入りを果したい。スピードボールには自信があるので、変化球打ちをマスターしたい。
とあった。最初の「恥じないよう〜」あたりは記者が付け加えたのかもしれない。