一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 村山実の快投
今回は『1970年8月10日号』。定価は80円。
オールスターの第3戦で奇跡が起こった。
阪神の
遠井吾郎。ぽっちゃり系の体形をからかわれることも多かったが、決して言われっぱなしのタイプではない。
このオールスターでも第1戦目の試合前、全セの
川上哲治監督(
巨人)に、
「おい、遠井君、ベンチから見ていると、足がちょっと速くなったような気がするのだが」
と言われ、
「まあ、監督より僕の足が速いのは確かですわ。なんならカッケコしてもよろしいですよ」
と返し、セベンチが大爆笑となった。
しかも、この遠井が第3戦でなんとランニングホームラン。ライト線の当たりで、
アルトマンが転倒したところを突いてだったが、ホームイン後、真顔で「死ぬかと思った」と言った。
まさに奇跡のランニング弾である。
球宴明けの話も書いておこう。
7月24日、首位巨人と相対した2位の大洋だが、84球で先発の
平松政次が3試合連続完封勝利を飾り、32イニング無失点を記録した。平松は3戦目にもリリーフ。2勝1敗の勝ち越しに貢献している。
前半戦で巨人に7ゲーム差をつけられた阪神も
村山実監督が燃えに燃えていた。
7月25日、
広島戦で先発し完封。さらに走者としては本塁でブロックする投手の宮本を突き飛ばすような果敢なスライディングを見せた。
練習でも自ら打撃投手となり、100球以上を投げ込む。
「巨人二独走はさせん」
さすがミスタータイガースだ。
この時点で、規定投球回数には、まだ16イニング足りないが、防御率は0.98だった。
東映・
森安敏明が永久追放になりそう、という話もあった。すでの西鉄・
永易将之に接待されたことは認めていたが、焦点は永易が証言する50万円を受け取ったかどうか。
森安はずっと否定してきたが、7月15日に兵庫県警四課から任意ながら出頭を要求する通知が届き、取り調べの2日目、50万円を受け取ったことを自供した。
森安は八百長は否定しながらも、「どうせ汚いカネなら使ってしまえ」と遊興、飲食にすべて使い切ったと話した。
この年は、ノムさんの兼任監督1年目だ。記事を探したがなかった。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM