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野村克也さんと最愛の妻・沙知代さんの秘話 「仙台のタクシー事件」

 

楽天監督時代の野村克也さん(右)と妻の沙知代さん


 野球解説者の野村克也さんが11日、死去したことが分かった。84歳だった。現役時代は南海、ロッテ西武で捕手を務め、1957年に本塁打王、65年に戦後初の3冠王を獲得した。通算3017試合出場は歴代2位、9度の本塁打王を獲得して通算657本塁打も歴代2位。史上最多となる通算19回のベストナインにも選ばれた。引退後はヤクルトで緻密な分析に基づくデータ重視の「ID野球」を掲げ、4度のリーグ優勝、3度の日本一に導いた。その後は阪神、社会人野球・シダックスの監督を経て、楽天の監督に就任。球団初となるクライマックスシリーズ出場を果たした。

 選手、監督としてプロ野球界に多大な貢献を果たした野村さんは愛妻家としても知られていた。妻の沙知代さんに「持っていると使っちゃうから」と現金ではなく、利用額の上限があるクレジットカードを持たされていた時期があった。ところがあるとき、仙台でタクシーに乗車したところ、現金のみの支払いでクレジットカードが使えない事態に。困った野村さんは通行人の女性に小銭を拝借。その女性には後日お礼に洋服をプレゼントした。「東北の人は優しいよなあ」とうれしそうに語っていた姿が印象的だった。

 沙知代さんが2017年12月に虚血性心不全のため85歳で死去すると、ショックが大きかったのだろう。約1000人が集まったお別れの会では、報道陣の前で「まさか私より先に逝くとは夢にも思わなかった。(自宅で倒れた際の)最後の言葉も“大丈夫よ”だった。弱気は100パーセント見せなかった。俺が死んだらこんなに集まるかな」と大粒の涙を流していた。

 監督時代は緻密なデータを駆使した「ID野球」で名を馳せたが、情に厚い人だった。楽天、阪神では自身が種をまいて育てた選手たちが、いずれも星野仙一さんが監督就任時に大輪の花を咲かせて優勝した。「ノムさんは面白くないだろう」と野村さんと星野さんの間に不仲説も流れたが、実際は違った。野村さんは「自分とは正反対のタイプ。とても有能な監督」と星野さんを評価していたという。星野さんが18年1月にすい臓がんのため70歳で逝去した際には「俺より先に逝くなんて、とんでもない!」と嘆いていた。自分より一回り以上若い星野さんが旅立ち、最愛の妻・沙知代さんにも先立たれた。野村さんは天国で再会できるのを楽しみにしているだろう。

写真=BBM
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