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低迷期を知るDeNAベテラン・石川雄洋の告白「昔はヤジが多かったけど、今は幸せ」

 

 2月下旬。DeNA石川雄洋は見慣れない背番号「42」を身にまとい、二軍の嘉手納キャンプで汗を流していた。球団野手最年長の33歳。「もうオジサンだから若い子たちと会話が合わないんですよ」と苦笑いしていたが、18歳のドラフト4位・東妻純平と練習の合間に笑顔で話していた。

 子どものときに「もっと声を出せ」と怒られていたエピソードが裏付けるように、石川は強いリーダーシップがあるわけではない。派手な外見だが口下手。「友達、少ないです。誤解されやすいし」と苦笑いするが、人望は厚い。当時の中畑清監督が2012年にDeNAの初代主将を決める際は、森本稀哲(現野球評論家)、渡辺直人藤田一也(ともに楽天)ら先輩たちが石川を推薦した。後輩からも慕われている。タンパベイ・レイズに移籍した筒香嘉智梶谷隆幸ら主力だけでなく、一回り年下の選手たちからも「石さん、石さん」と積極的に話しかけられる。親会社がTBS時代から在籍する数少ないベテランだが、近年は若手の台頭で出場機会が減っている。プロ16年目にかける思いを直撃した。

「チームに貢献したい。それだけ」


DeNA・石川雄洋


――背番号が7から42に変わった。

「気持ちを新たに42番に変えさせていただきました。正直残りの野球人生が長いわけではない。『(背番号を)変えていいですか?』って聞いたら、三原(一晃球団代表)さんに『石川らしいな』と言われて。7番もすごく好きな番号。でもこれからは若手につけてほしいですね」

――後輩の筒香がメジャーに移籍した。

「もちろんゴー(筒香)のことは応援していますよ。身近でメジャーに行った選手がいないし、横浜高の後輩ですしね。ただ、いない選手のことを考えても仕方ない。抜けたのは大きいけど、そのポジションが空いて何人の選手がチャンスと思えるか。若手はレギュラーをつかむ大きなチャンスです。ゴーがいなくなって負けたと言われたくない」

――自身に求められている役割は?

「チームに貢献したい。それだけですね。ここ数年はスタメンで出られなくなっているけど、当然もう一度スタメンで出場し続けたいし、途中出場でも貢献できるように準備する。今はファームにいるので一軍で戦力になれるように頑張るだけ。つまらないコメントかもしれないけど(笑)、これが本心なんですよね。毎日に精いっぱいです」

――昨年は代打で打率・316の好成績だった。

「4打席チャンスがあるスタメンと比べると、投球の体感速度が全然違う。代打はものすごく速く感じる。代打で活躍している選手のすごさを感じました。僕の感覚で言えば、ヒットを打とうとしたらダメ。3回振って前に飛ばすぐらいの気持ちの方が良い結果が出る。それは代打の切り札で活躍された後藤武敏さん(現楽天二軍打撃コーチ)のアドバイスを参考にさせていただきました」
 
――昨季は犠打機会も6度全部成功した。

「犠打をきっちり決めることもそうだし、エンドランのサインでチャンスを広げたり、走塁での状況判断とか数字に出ないプレーを大切にしたい。僕は不器用で泥臭いし、派手な数字を残せるタイプじゃない。できることをきっちりやってチームに貢献したい」

「個人の目標はない」


――若手の台頭で置かれた立場は厳しくなっている

「今年に限らず、ここ1、2年は結果を出せなかったら引退という思いでプレーしている。チャンスは多くないかもしれないけど死に物狂いで生かすだけ。昔からそうです。若手の当時は同じポジションに石井琢朗さん(現巨人一軍野手総合コーチ)、仁志敏久さん(現侍ジャパンU12代表監督)というすごい方がいました。同期の藤田(一也)さんもそう。技術は到底勝てない。ガムシャラに、必死にやるしかない。ケガしても試合に出て。じゃないと居場所がなくなりますから。チャンスをもらえるだけで幸せです。今も若手の時と一緒です。腐っている暇がない。反骨心だけです。絶対に負けないぞって」

――チームが低迷期の時代は観客も少なかった。今は横浜スタジアムが満員の環境でプレーできる。

「歓声はメチャメチャうれしいです。代打の1打席だけであれだけの歓声を送ってもらって……昔はヤジが多かったので、ちょっとびっくりしていますが(笑)。横浜高校からプロに入って地元のベイスターズで16年間もプレーして。ドラフト6位で入団してこんなに長くプロの世界でできると思わなかった。若手で試合に出ていたときはチームが低迷していて、『どうすれば勝てるんだろう』と悔しい思いをした時間が多かったけど……ファンの方々もつらかったと思います。今は大歓声を受けてプレーできる環境に感謝しています。こんな幸せなことはないなって」。
 
――チームは1998年以来リーグ優勝から遠ざかっている。

「そうですね。だから個人の目標はないです。優勝しかないです。優勝すれば選手だけでなく、首脳陣、裏方さん、球団に携わる方々、選手の家族、DeNAファンとたくさんの人が喜べる。お世話になった方たちが喜んでいる姿を見ると、こっちもうれしくなるじゃないですか。横浜スタジアムにいつも満員のお客さんが来てくれますし、最近はビジターの応援もすごい。期待に応えられるような結果を出したいですね」。

文・写真=平尾類(インプレッション)
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