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早大の沖縄キャンプが中止。小宮山監督は「マイナスをプラスに変えろ!」

 

緊急事態もマネジャーが冷静に対処


早大・小宮山悟監督はキャンプ中止という「緊急事態」にも、冷静に対処。学生たちには、さらなる高い意識づけを求めている


 ピンチこそ、チャンスとしてとらえている。

 新型コロナウイルス感染防止のため、2月27日から3月14日まで予定されていた早大の沖縄キャンプが中止になった。同23日、早大総長から体育各部の合宿に加えて、遠征の全面中止の指示が出たのが、その理由である。

 そこで、すぐさま対応に追われたのが、チーム運営における中枢のマネジャーである。しかし、どんなときも慌てない。豊嶋健太郎主務(4年・南山高)と牛島詳一朗副務(4年・早稲田摂陵高)が協力して、冷静に対処。沖縄に帯同する予定だった豊嶋主務は言う。

「小宮山(悟)監督からも『逆境を乗り越えるしかない。マイナスをプラスに変えろ!』と。こういう状況だからこそ、マネジャーの腕の見せどころです」。敏腕ぶりを発揮した。

 21日の段階で、大学関係者を通じて「ウワサ」を小耳にはさんでいたという。15日には約40人のキャンプメンバーが決まり、18日には荷物送りを終えていた。あとは、出発を待つのみ。準備万端だっただけに、大学側の早期の「決断」が欲しかったのが本音。実際、水面下で連絡が入ったのは22日夜。23日、大学からの正式発表を待って早速、手配を始めた。

 航空券、宿泊先、移動バス、食事、球場……。キャンセルする関係各所は多岐にわたった。現場レベルにおいては、予定されていた7試合のオープン戦が中止。すぐに、スケジュールの再調整に入った。

「お世話になっている大学、社会人のマネジャー、プロ野球では窓口となっている担当スカウトさんに片っ端から電話しました。私たちのようにキャンプや遠征が中止になったチームもあり、急な話でしたが、ご対応をしていただき、感謝の言葉しかありません」(豊嶋)

 26日現在で5試合が決定し、今後の調整次第では、2試合ほどが追加される。つまり、沖縄遠征で組まれる予定だった実戦機会を、そのまま東京で消化できる形となりそうだ。一軍が留守の間、早大・安部球場で行われる予定だった二軍戦は一部中止となったが、グラウンドを変更するなど日程を組み直している。

現実をしっかり受け止めるエース


早大は2月27日から予定されていた沖縄キャンプを、新型コロナウイルス感染防止のため中止。練習拠点である安部球場で汗を流す


 26日夜、小宮山監督は「今回のお詫びと、来年以降のこともありますので」と、キャンプ地・浦添市の市長らを訪問のため沖縄へ向かった。もう一つの目的もあった。毎年、キャンプインのタイミングで、参加者全員で平和祈念公園において慰霊碑に献花を行い、沖縄で戦没した野球部OBの霊を弔い、追悼の意を表している。太平洋戦争で早大野球部OBは約30人が亡なったが、そのうち、近藤清さん(昭和15年入学)、壺井重治さん(昭和16年入学)が沖縄で戦没。今回は小宮山監督が野球部を代表して献花し、手を合わせた。

 小宮山監督は言う。

「(関係各所には)申し訳ない気持ちですが、政府が対策基本方針を示した以上、キャンプに出掛けるのはよろしくない、と。ただ、どういう状況であれ、言い訳にしてはいけない。その時点で、アウト。与えられた環境で、いかにやれるか? 長い間、プロでやってきた経験でもある。意識をすれば、解決できる」

 4月のリーグ戦開幕へ向けて、温暖な地でピッチを上げていきたいところだったが、練習拠点である安部球場で汗を流す。1月いっぱいで新人工芝の張り替えは終わったが、今後、室内練習場の改修に着手するという。本来は2月中に完了する予定だったが、今回のキャンプ中止で工期は未定となった。とはいえ、工事着工後に雨天となった場合には、すでに手配済の室内練習場に移動しなければならない。問題点を挙げればキリがないが、主将で左腕エース・早川隆久(4年・木更津総合高)も現実をしっかりと受け止めている。

「中止になってしまった以上、仕方ないことです。今後の練習もイレギュラーな形で進んでいきますが、その中で対応し、技術を上げていかないといけない。正直、球種を体で覚えるため、沖縄で投げ込みをしたい思いもありましたが、東京にいれば、しっかり体のケアもできる。遠征先では手が回らない部分もあるので、ケガのリスクも軽減される。この緊急事態、想定外の展開をいかにクリアしていくか。身を引き締めて取り組んでいきたい」

 ハイリスク、ハイリターン。2015年秋以来の東京六大学リーグ戦制覇を目指す早大は今春、真価が問われるシーズンとなる。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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