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【MLB】11月に始まっていた前田健太トレードの舞台裏

 

ツインズのファルビー編成部長は、3球団トレード破談から、前田を獲得するため執念でドジャースとのトレードを成立させた。ア・リーグ中地区優勝のツインズは、本気で今季の世界一を目指す


 前田健太のトレードは昨シーズン終了後、11月に始まっていた。

 それまでのアダム・カッツ代理人に代わり、主任代理人を務めることになったワッサーマンメディアグループのジョエル・ウルフ代理人がドジャースに対し、先発投手としての前田にもっと敬意を払うべきと断固主張した。

 11月のGM会議で日本メディアに対し「ケンタは素晴らしい先発投手。ドジャースはそれが分かっていないし、目を覚ませと言いたい。すでに(編成本部長の)アンドルー・フリードマンとは話しているし、これからも続けていく」と説明したのだ。

 これに対しフリードマン編成部長は筆者の取材に「私たちにとって一番にあるのはチームが勝つこと。選手を驚かせるようなことをしてはならないが、その姿勢は変わらない」と返答した。前田はMLBの中で右打者を圧倒しているが、左打者には結果を残せていない。そこでシーズン終盤が近付くとプレーオフをにらんで配置転換、リリーフで対右打者の切り札として起用してきた。先発にとどまりたいなら、結果を出せと言う。

「ケンタはもっと良くなる余地があると思う。公式戦で先発ローテーションに留まるだけではなく、来季プレーオフでも先発できるよう、次のステップを踏んでくれれば」と注文を付けた。

 実はこの時点で、前田側はトレードもやむなしの姿勢で、前田本人も覚悟していた。ドジャースは好んで契約した球団だが、それ以上に彼には先発投手としての強い自負があり、きちんと勝負できる環境が欲しかった。

 とはいえ、トレードを決めるのは球団であり、聡明なフリードマン編成部長は自チームにとってマイナスの取り引きはしない。ゆえに前田側の姿勢を知っても、即、トレード要員とはしなかった。言うまでもない前田は世界一に必要な戦力だからだ。

 そこに前田を先発投手として高く買うツインズが現れた。12月のウインターミーティングでドジャースに対し興味を表明し、1月ムーキー・ベッツのトレード交渉がドジャースとレッドソックスの間で進められていたときに参入した。

 当初、発覚した3球団のトレードでは、ツインズが同球団のトッププロスペクト、ブルスダー・グレイテロルをレッドソックスに出し、ドジャースから前田が移ってくるというものだった。だがそれが破談になると、2球団のトレードでは、グレイテロルに加え、全体67番目のドラフト指名権まで差し出した。つまりツインズは前田がどうしても欲しかったのである。

 昨季101勝したツインズは、今、このタイミングがワールド・シリーズ出場への絶好の好機と見て、代償を払い過ぎても良しと腹をくくった。ツインズの編成本部長デレク・ファルビーは、以前はインディアンズにいて、強力投手陣を作りあげるのに功績あった人物。勝ち星やイニング数ではなく、空振り率や打球速度などから、前田はもっと好成績を残せると判断していた。

 結果、フリードマン編成本部長にとっても、満足の取り引きとなった。みんなが満足する形で、キャンプ直前にこのトレードが決まったのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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