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球界の論点

新型コロナ対策で手を取り合ったNPBとJリーグ スポーツ界の新しい未来図が描かれる?/球界の論点

 

公式戦開幕は不透明


NPB・斉藤コミッショナー(左)、Jリーグ・村井チェアマン


 世界中に蔓延している新型コロナウイルスが国内でも猛威を振るい、球界に大きな影響を及ぼしている。プロ野球は2月29日からオープン戦の残り全試合(72試合)の無観客開催を決定。3月19日に開幕する予定の第92回選抜高校野球大会は、とりあえず一般非公開の形での準備となった。感染症の決定的な治療法が見つからず、事態収束の見通しが立たないまま。関係者からは悲鳴が上がり、ファンのやきもきした日々が続いている。

 プロ野球の無観客開催は公式戦、オープン戦を通じて初めて。「国難と言える事態になりかねない。苦渋の決断」(斉藤惇プロ野球コミッショナー)として異例の措置に踏み切ったが、事態は当初の予想以上に悪化。各球団は対応に追われている。

 鈴木直道知事が「緊急事態宣言」を発した北海道を本拠地とする日本ハムは、選手に外出を当面は控えるように通達。寮以外に住む単身者が札幌ドームで食事がとれるようにした。中日はオゾン発生装置をロッカールームに設置。ほとんどの球団が報道陣にもマスク着用を要請し、球場入りの際に検温や体調チェックを義務化。ベンチ前の取材を禁止するなど、極力選手との接触がなくなるように配慮した規制が、全12球団に広がっている。

 オープン戦の無観客試合は新型ウイルス対策の暫定的対応であり、20日に開幕するセ・パ両リーグの公式戦については不透明。オープン戦期間の状態よりも好転しない限りは通常態勢による強行開催は難しく、開幕延期もやむを得ない状況に置かれている。

 日本高校野球連盟は4日、大阪市内で選抜大会の開催についての臨時理事会を開き、春夏甲子園で史上初となる無観客開催を発表。しかし、政府見解や周囲の反応や状況を見ながらの暫定決定であり、突然中止となる可能性は低くない。高野連は「球児の夢の実現のため、大人が何とか努力をしてあげたい」(八田英二会長)と開催の道を模索しているが、この姿勢に賛否両論が巻き起こっている。

「子どもたちが甲子園のグラウンドに立てるのは、一生に一度かもしれない。よく決断した」という意見がある一方で、「他競技は中止や延期が相次いでいるのに、高校野球だけが特別なのか」と否定的な声も多い。感染に比例して自粛ムードが広がる中、高野連は独自路線を打ち出した。投手の“500球制限”などさまざまな議論を巻き起こしている高校野球が、今回のコロナ騒動でも新たな課題を提起しそうだ。

これまでになかった動き


 そんな中、スポーツ界がこれまでになかった動きを見せている。日本野球機構(NPB)とサッカーJリーグは、合同で「新型コロナウイルス対策連絡会議」を設置。東北医科薬科大特任教授の賀来満夫氏ら感染症専門家がメンバーとして名を連ね、感染予防対策に乗り出すことになった。同会議にはプロ野球の斉藤コミッショナー、Jリーグの村井満チェアマンらが出席。ラグビーのトップリーグからは太田治チェアマンもオブザーバーで参加し、第2回会議から高野連からは小倉好正事務局長が加わることが決まっている。開催の可否など決定事項は各組織の判断という前提で、予防策や感染者が出た場合の対応方法など情報を共有し、打開策を探るという。

 未知の感染症がタッグ結成の引き金となったのは皮肉ではあるが、主要団体が競技やプロアマの垣根を越えて手を携えるのは画期的なことだろう。「独善的」「閉鎖的」――と言われ続けた誇り高き各団体が、謙虚に胸襟を開き、未来永劫その哲学と価値観を直接ぶつけ合うきっかけとなればいい。違った目線からの知恵を出し合って苦難を乗り越えた先には、今までとはひと味違うスポーツ界の未来図が描かれているはずだ。

写真=BBM
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