苦しんだ昨季の経験を生かす殺すも自分次第だ。
アマチュア時代から“強打の捕手”として名を馳せていた頓宮裕真だが、打力を生かすためにプロ入りと同時に捕手から三塁転向。チームに欠ける右の長距離砲として大きな期待を寄せられ、新人年の昨季は球団62年ぶりとなる開幕クリーンアップ(五番)に抜擢された。が、不慣れな三塁守備でミスが続くと、次第にバットも湿っていった。
「結果を出さないといけないと思って焦りもあったんです。バッティングも小さくなって打ちにいっていましたし。サードの守備でもいろいろ考えてしまって、それがバッティングにも影響してしまい……。打撃を期待して使ってもらっていると思っていたので『打たないと』という気持ちが先走っていたんです」
打率は低空飛行を続けて二軍降格。一時は再昇格を果たしたが、7月には右足を疲労骨折して以降、一軍の舞台に立つことができなかった。それでも、離脱中は貴重な時間にもなったという。
「このままでいいのだろうか、自分はどうなりたいのか」──。
自問自答を繰り返し、1つの答えが出た。それが「捕手再転向」だ。
「後悔のない野球人生にしたいと思ったんです。言い方は悪いですけど、自分の中では『サードを“やらされている”』という感覚がずっとあったのが正直なところ。そういう気持ちで三塁をやって結果が出ないのなら、後悔をしないようにキャッチャーで勝負しよう、と。それでダメならダメであきらめもつく」
自ら選んだ道だからこそ、努力は惜しまない。オフには投手陣の昨季の映像をチェック。球種など特徴をノートに書き込んで頭に叩き込み、今春キャンプでは実際にボールを受けて、“学んだこと”と“体感した生きたボール”をすり合わせていった。
「変化球だって実際に受けると映像で見た曲がり幅も違います。それを知らないと、どうやって攻めていくかも考えられませんから。このボールはこう使えるなど、肌で感じて、配球などに生かしていきたいと思っています」
八番・捕手で出場した3月10日の
中日とのオープン戦(京セラドーム)では、先発・
山本由伸を6回1失点と好リードし、バットでも2回に2点先制適時打を放った。攻守で存在感を示す背番号44は、今春キャンプで今季にかける意気込みをこう話している。
「去年のケガを生かすためにも、キャッチャーとして頑張らないといけない。マスクをかぶった試合は勝って、なおかつ打って。少ないチャンスだと思うんですけど、そこでしっかり結果を残していきたい」
覚悟を決めた男は強い。“2年目のルーキー”に迷いはない。
写真=BBM