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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

センバツ中止決定。1週間前に結論を出す選択肢もあったのでは

 

3月19日に開幕する予定だったセンバツ高校野球大会は中止。高校球児にとって、甲子園でプレーできない無念は計り知れない


 結論は1週間の先延ばし――。

 この時間をどうとらえるのか、非常に難しい問題だ。

 3月19日の開幕へ向けて準備が進められていたセンバツ高校野球大会の中止決定である。3月4日、日本高野連の臨時理事会では結論を出さず、同11日の臨時運営委員会で最終協議された上での「中止」だ。

 大会運営サイドとしては、何とか出場32校に甲子園の土を踏んでほしいと、開催(無観客試合)に向けて「努力」を続けた1週間。現場サイドは開催を信じて、限られた環境下で「努力」を続けた1週間だった。

 双方とも「無念」という共通点はあるが、果たして、ショックが大きいのはどちらだろう。

 明らかに後者だ。この1週間、32校の球児たちは、あこがれの甲子園でプレーできることを信じてきた。全国的に感染が拡大している新型コロナウイルス。主催者側はさまざまな対策を講じてきたが、結果的に選手の健康を最優先するため、中止の結論に至った。1週間の情勢を見れば仕方ない「苦渋の決断」だが、現場の気持ちを考えるとやはり心が痛む。

 2014年のセンバツで優勝へ導いた龍谷大平安高・原田英彦監督(昨秋は京都大会準々決勝敗退)は3月4日時点で、この「先延ばし」が教育上、厳しい展開になると予告していた。

「この1週間を経て中止の判断となった場合、仮に私が出場校の監督ならば、どのように説明すればいいのか、言葉が見つかりません」

 出場校の「思い」を代弁したが、まさしく、そのとおりである。

 夏の甲子園は各都道府県大会を勝ち上がった代表校が出場する「選手権大会」に対し、春のセンバツ甲子園は大会主催者が選出する「招待大会」。選ばれた32校は、何とか開催へ向けて尽力した1週間の「準備」に感謝している。立場上、それ以上は口にできない。

 涙を見せている球児もいた。当然である。野球において「たら・れば」は禁物であることを承知の上で……。この結論が少しでも予測できたのだとすれば、4日の時点で中止にする選択肢もあったと思う。現場に期待を持たせたこの1週間により、心の傷はさらに深まった可能性は少なからずある。とはいえ、どうにかして、3月19日の開幕を迎えたいと、ギリギリまで予防対策に取り組んできた大会運営サイドの取り組みも十分、理解できる。

 一生に1度のチャンスだったかもしれない甲子園――。どこにもぶつけられない、当事者にしか分からない悔しさである。言うまでもなく、出場校の指導者は生徒に対して「細心のケア」という大変な仕事と直面する。簡単に「夏に向けて頑張ろう!!」とは言えない。ここは、時間をかけていい。次の目標に向かって最善の形で、一歩を踏み出してほしい。

文=岡本朋祐 写真=早浪章弘
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