週刊ベースボールONLINE

ベースボールゼミナール

球速を上げるためのトレーニング方法は?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.球速を上げるためのトレーニング方法を教えてください。いま、高校1年生で最速が130キロです。140〜145キロくらいまでは上げたいと思っています。どういったトレーニングが有効ですか。(静岡県・16歳)


NPB最速は2016年、日本ハム時代の大谷翔平が記録した165キロだ


 球速を上げたいと思うのは、ピッチャーならば誰もが求めていることで、その方法も1つではありませんが、私なりに思うところを解説していきます。ちなみに、質問の方は16歳の高校1年生時点で130キロを投げられるわけですから、それだけポテンシャルがあるということでもあり、希望の140〜145キロにはやり方(もちろん、ケガをしない予防も重要です)を間違えなければ、かなり高い確率で手が届くのではないでしょうか。

 予防と強化を両立させるには、まず、肩のインナー(マッスル)のトレーニングは不可欠です。と同時に、トレーニングをすると筋肉が締まりますから、今度は重点的にストレッチをすることで伸ばしておくことも必要でしょう。また、肩甲骨を意識したトレーニング(実際に投げるシーンでも私は意識していました)も同じように重要です。ヒジが上がると肩甲骨は横に動くのですが、動きを良くして、かつリリースの際にはピタッと止まらなければいけない。これには強さが必要で、可動域を広げること、そして意識して動かせるようになることは無視できないということです。

 ここまで肩回りの話をしてきましたが、それだけでは球速アップにつながりません。ランニングも必要ですし、スクワットやランジ系の下半身のトレーニングで土台を作ることも忘れてはいけません。一方で、かつて、「ピッチャーは走れ、走れ」と言われる時代がありました。走ること自体は否定しませんが、しかし、それだけでも強いボールを投げられるようにはなりません。ランニングの目的は、下半身の強化、心肺機能の向上に、かつ体幹を安定させるところにあって、最終的には上下を連動させてやることが大切です。その上で、メカニック、つまり正しいピッチングフォームを考えてほしいと思います。

 アマチュアの選手で多い勘違いは、腕を速く振れば速いボールを投げられる、と考えていることです。腕は振るものではありません。正しいフォームを身につけ、フォームが理にかなっていれば、腕は自然と振れるものです。無理やり振らないほうがいいでしょう。腕が振れるように体を使うことを大事にしてみてください。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年3月2日号(2月19日発売)より

写真=Getty Images
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング