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東大野球部の空気を変えるか? 12年ぶりに甲子園球児が入部

 

1年の浪人を経て、東大理科1類に合格した梅林浩大内野手。静岡高では背番号13を着け、2018年春のセンバツ甲子園に出場した


 プロ野球が開幕延期、センバツ高校野球大会は史上初の中止、社会人野球は各種大会で中止、無観客試合、延期の対応に追われ、大学球界も春のリーグ戦開幕へ向けて、情勢を見極めている状況だ。新型コロナウイルスの感染拡大はさまざまなスポーツ現場で影響が出ている。閉塞感が漂う中、明るいニュースが飛び込んできた。

 東大野球部に12年ぶりに甲子園球児が入部する。静岡高出身の梅林浩大内野手だ。1年の浪人を経て3月10日、理科1類に合格。

 3年間を指導した静岡高・栗林俊輔監督は「左打席から力強いスイングが持ち味。実力は十分あるので、活躍を期待したい」と語る。2018年春のセンバツアンケートによると、好きなプロ野球選手はソフトバンク柳田悠岐。179センチ、80キロと堂々とした体格である。

 栗林監督は浜松市にある中郡中時代から梅林の存在を知っていた。18年春のセンバツ2回戦(対駒大苫小牧高)で完封した右腕・春翔一朗(法大2年、準硬式野球部)と同じ中学校で「梅林は勉強ができる生徒だと聞いていました。一般入試で静高に挑戦すると伝え聞いていました」と明かす。

 静岡高は県下トップの進学校。梅林は入学後も部活動と学業を両立し「成績上位者」に近いレベルをキープしていた。しかし、野球の面では周囲のレベルの高さに、自身で「限界」を決めつける場面が見受けられたという。そこで栗林監督は1年秋、梅林を呼んだ。

「安易に勉強に走るな、と。野球も工夫してやれば結果はついてくる。学力も高いですし、野球の力もあるので、本気で両方をやり切ってほしいと、東大を狙ってはどうかと勧めたんです。宇宙工学に興味があったようで、それ以降は、目の色を変えて取り組んでいました。いざ、やるときの集中力がものすごい」

 2年秋から代打の切り札(ポジションは一塁手)でベンチ入りすると、東海大会優勝に貢献。3年春のセンバツでは出場機会はなかったが、甲子園で2試合を経験している。

「東海大会や甲子園などの遠征時は、勉強道具を持ち込んで、時間を見つけては机に向かっていました」(栗林監督)

 4回戦で敗退した夏の静岡大会を終えると、バットを置いて、勉強モードに切り替えた。東大野球部が主催する2週間にわたる、8月の夏期講習にも参加。当時、同講習を担当した玉村直也マネジャー(4年・渋谷教育幕張高)との交流はその後も続いた。浪人中、東京で行われた模試の際には食事に行くこともあったという。それだけに今回の合格は、自分のことのようにうれしい。

「ものすごく熱心ですし、意欲がある。3月19日にはこちらに来て説明会をするんですが、再会するのが楽しみです。1年間、浪人していますが、1日も早く、東大の戦力になってほしい。期待しています」

 梅林には人を惹きつける力がある。栗林監督も認める。

「人間的な能力が高いんです。高校在学中も、中学時代にお世話になった先生に、ことあるごとに手紙を書いていた。律儀で実直な性格ですので、誰からも慕われていました」

 今後は入部届を提出し、3月中は仮入部扱いで汗を流し、4月以降に正式入部の運びとなる。梅林だけでなく、17年夏の甲子園でベンチ入り(背番号14、出場なし)した別府洸太朗外野手(東筑高、174センチ、72キロ、右投左打)も二浪を経て、東大理科2類に合格した。東大は1998年春から昨秋まで44季連続最下位で、17年秋から42連敗中と苦戦が続いている。2人の元・甲子園球児が空気を変えていきそうだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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