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2020年ドラフト戦略にも多大な影響を及ぼすセンバツ中止

 

日本高等学校野球連盟が主催する春のセンバツ甲子園大会は、史上初の中止。プロのスカウト戦線においても、多大な影響が出ている


 3月19日。本来、春のセンバツが開幕するはずだった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、主催者は同11日の臨時運営委員会に「苦渋の決断」により、中止を決定した。戦争による中断を除き、中止は史上初である。

 高校球児にとって、一生に一度かもしれなかった晴れ舞台。NPBスカウトにとっても無念だった。この最高のステージが見られず、仕事の場を失ったからだ。同4日の臨時理事会の時点で「無観客試合」での開催を模索していくことが決まり、甲子園での視察は不可能となっていた。「テレビ視察」を計画するスカウトもいたようだが、やはり、生の臨場感を味わえないのは、かなりの痛手であった。

 センバツはNPBスカウトにとって、シーズンの本格到来を意味する「正月」の位置づけにある。開幕前日には毎年、プロ野球スカウト総会が開催。翌朝、甲子園ネット裏には全国からNPB全12球団のスカウトが集結し、球児のプレーに目を光らせる(原則、全出場32校が登場する一回りを視察)。

 かつて、あるスカウトは全員で視察する「目的」について、こう語ったことがある。

「甲子園という大観衆の中でのパフォーマンスは、われわれにとって評価の対象になります。いくら素材が良いと言われても、プレッシャーと向き合えなければ意味がありません。見ているのは、試合の結果だけではありません。プレーの中身。春、夏の甲子園大会は『将来性』という意味で、参考になるわけです」

 プロが「逸材」を発掘する、その貴重な機会が奪われてしまったのは、不運としか言いようがない。例年ならば、センバツの「内容」によって、夏まで視察を継続するかを、見極める一つのステップになっていた。しかしながら、大会が中止となった以上は仕方ない。むしろ春以降、どの選手をターゲットにしていくか、スカウトの手腕が問われるところ。とはいえ、全国の春の大会も開催が不透明で、スカウトの周辺は、かつてない事態に直面しそうだ。高校生の公式戦は夏の甲子園に出場しない限り、地方大会が最後。大学や社会人と比べ、アピールできる時間は限られている。

 今回のセンバツ中止は、2020年ドラフト戦線にも多大な影響を及ぼしているのである。

文=岡本朋祐 写真=早浪章弘
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