ロッテの佐々木朗希は、今年のルーキーの中で最も注目を集めている選手だ。大船渡高時代には非公式ながら高校生最速となる163キロを記録し、ドラフトでは4球団が競合。抽選の結果ロッテに入団したが、1年目からの活躍が大いに期待される、まさに黄金ルーキーだ。では、同じようにドラフトで4球団以上が競合した選手は、プロ1年目にどのような成績を残したのだろうか?
野手より投手のほうが好成績を残す傾向にあり
第1回ドラフト会議が行われた1965年から2018年までを対象に調べたところ、1巡目指名(1巡目再抽選を含む)で4球団以上が競合したケースは30回(2019年の佐々木を入れると31回)。内訳は4球団競合が15回、5球団競合が6回、6球団競合が5回、7球団競合が2回、8球団競合が2回となっている。4球団以上が競合した選手と入団1年目の成績を以下にまとめてみた。
※年号はドラフト開催年、( )内は交渉権獲得チーム ●1966年 4球団競合
江夏豊(
阪神)
42試合 12勝13敗 防御率2.74
●1978年 4球団競合
江川卓(阪神)※入団後に
巨人にトレード移籍
27試合 9勝10敗 防御率2.80
●1978年 4球団競合
森繁和(
西武)
43試合 5勝16敗7セーブ 防御率4.52
●1979年 6球団競合
岡田彰布(阪神)
108試合 376打数109安打 18本塁打 54打点 4盗塁 打率.290
●1980年 4球団競合
原辰徳(巨人)
125試合 470打数126安打 22本塁打 67打点 6盗塁 打率.268
●1983年 4球団競合
高野光(
ヤクルト)
38試合10勝12敗2セーブ 防御率4.83
●1985年 6球団競合 清原和博(西武)
126試合 404打数123安打 31本塁打 78打点 6盗塁 打率.304
●1986年 5球団競合
近藤真一(
中日)
11試合 4勝5敗 防御率4.45
●1989年 8球団競合
野茂英雄(近鉄)
29試合 18勝8敗 防御率2.91
●1990年 8球団競合
小池秀郎(ロッテ)
入団を拒否
●1991年 4球団競合
若田部健一(ダイエー)
27試合 10勝13敗 防御率4.00
●1992年 4球団競合
松井秀喜(巨人)
57試合 184打数41安打 11本塁打 27打点 1盗塁 打率.223
●1995年 7球団競合
福留孝介(近鉄)
入団を拒否
●1997年 4球団競合
川口知哉(
オリックス)
1年目一軍出場なし
●2001年 4球団競合
寺原隼人(ダイエー)
14試合 6勝2敗1セーブ 防御率3.59
●2006年 4球団競合 田中将大(楽天)
28試合 11勝7敗 防御率3.82
●2007年 6球団競合
大場翔太(
ソフトバンク)
13試合 3勝5敗 防御率5.42
●2007年 5球団競合
佐藤由規(ヤクルト)
6試合 2勝1敗 防御率4.55
●2007年 5球団競合
長谷部康平(楽天)
13試合 1勝4敗1HP 防御率9.93
●2009年 6球団競合
菊池雄星(西武)
1年目一軍出場なし
●2010年 6球団競合
大石達也(西武)
1年目一軍出場なし
●2012年 4球団競合 藤浪晋太郎(阪神)
24試合 10勝6敗 防御率2.75
●2013年 5球団競合
松井裕樹(楽天)
27試合 4勝8敗3ホールド4HP 防御率3.80
●2014年 4球団競合
有原航平(
日本ハム)
18試合 8勝6敗 防御率4.79
●2016年 5球団競合
田中正義(ソフトバンク)
1年目一軍出場なし
●2016年 5球団競合
佐々木千隼 (ロッテ)
15試合 4勝7敗 防御率4.22
●2017年 7球団競合
清宮幸太郎(日本ハム)
53試合 160打数32安打 7本塁打 18打点 0盗塁 打率.200
●2018年 4球団競合
根尾昂(中日)
2試合 2打数0安打 0本塁打 0打点 0盗塁 打率.000
●2018年 4球団競合
小園海斗(
広島)
58試合 188打数40安打 4本塁打 16打点 1盗塁 打率.213
●2018年 4球団競合
辰己涼介(楽天)
124試合 314打数72安打 4本塁打 25打点 13盗塁 打率.229
このうち、1年目でいきなり新人王に選ばれたのは岡田彰布、原辰徳、清原和博、野茂英雄、田中将大、有原航平の6人。中でも清原と田中は高卒1年目で主力として活躍し、一躍リーグを代表する選手に成長した。
また、新人王に選ばれなかったものの、江夏や若田部、藤浪など10勝を挙げる活躍を見せた選手もいる。ただし、こうした活躍を見せるのは投手が多く、野手は清原以降、目立った活躍が残せていない。7球団競合の清宮は高卒では歴代9位タイの7本塁打を記録したが、注目のルーキーとしてはやや物足りない成績に終わった。2018年ドラフトの目玉だった4球団競合の根尾も、1年目の出場はわずか2試合。厳しいシーズンとなった。
日米で活躍した松井秀喜も、一軍再昇格から1カ月で10本塁打と才能の片鱗は見せたものの、1年目は二軍暮らしが中心だった。高卒野手が1年目から好成績を残すのはかなり難しいのだ。そう考えると、高卒1年目で3割31本塁打を記録した清原は相当な怪物だったといえる。
過去の結果を踏まえると、同じ注目ルーキーでも投手のほうが好成績を残しやすい。4球団競合のロッテの佐々木朗希も、同じように1年目から好投する可能性がある。2006年の田中将大に続く「4球団競合高卒投手の新人王」となるか、今シーズンの活躍に注目したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM