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プロ野球20世紀・不屈の物語

ロッテ“悪夢の18連敗”に始まった胎動/プロ野球20世紀・不屈の物語【1998年】

 

歴史は勝者のものだという。それはプロ野球も同様かもしれない。ただ我々は、そこに敗者がいて、その敗者たちの姿もまた、雄々しかったことを知っている。

頂点の横浜、どん底のロッテ


98年七夕に行われたオリックス戦の9回、同点2ランを浴びてマウンド上で崩れ落ちた黒木


 1998年のプロ野球で、もっとも印象的な場面といえば、やはり38年ぶりにリーグ優勝、日本一を遂げた横浜の歓喜だろう。60年の初優勝、日本一を最後に、ほとんどをBクラスで過ごした横浜は、前年の2位で勢いづくと、打ち出したら止まらない“マシンガン打線”、勝ちゲームの9回に君臨した“大魔神”佐々木主浩らの活躍で勝ち進んでセ・リーグを制覇、日本シリーズでも2年連続でパ・リーグを制した西武を破って、横浜の街に熱狂を呼び込んだ。もちろん、そこには両リーグ5球団ずつ、日本シリーズで敗れた西武も含めれば11球団の“敗者”がいたわけだが、中でもパ・リーグの最下位に沈んだロッテの姿を、もしかすると頂点に立った横浜に次ぐほど、人によっては横浜をもしのぐほどに、98年の光景として印象に残しているのではないだろうか。

 横浜の前身である大洋と同様に、50年の2リーグ分立で毎日としてプロ野球に参加したロッテ。1年目から日本一に輝き、60年には大毎としてリーグ優勝も、日本シリーズでは初優勝の大洋に苦杯を喫している。70年にロッテとして初優勝、74年には巨人のV10を阻んだ中日を下して日本一に。だが、それが20世紀における最後の歓喜となった。パ・リーグでは73年から前期、後期の2シーズン制が採用されており、80年から2年連続で前期を制したものの、プレーオフでは連敗。80年代は落合博満が3度の三冠王に輝くも優勝には遠く、その後も低迷を続ける。

 大洋が去った川崎球場を78年から本拠地にしていたが、アクセスの悪さもあって客足も低迷し、90年代に入っても状況は好転せず。「テレビじゃ見れない川崎劇場」という自虐的なキャッチコピーで話題を集めるも観客を集めるには至らず、92年に心機一転、千葉マリンスタジアムへと移転した。川崎ラストイヤーを最下位で終えたロッテだったが、千葉1年目も最下位。それでも、95年にはバレンタイン監督の“魔術”で2位に躍進するなど、好転の兆しは見え始めていた。

 そんなロッテが迎えた98年は、前年の最下位が嘘のように開幕から順調に勝ち進み、5月4日までは首位。その後は順位を落として、6月12日には5位だったが、首位も5ゲーム差と、悪い状態ではなかった。だが、翌13日のオリックス戦(千葉マリン)に敗れると、悪夢が始まる。以降12連敗。30日の西武戦(福井県営)に引き分けて小休止も、7月に入ってからも悪夢から覚めることはなかった。4日のダイエー戦(千葉マリン)では試合前にお祓いを受けるも延長11回に力尽きて15連敗。翌日の同カードでプロ野球ワースト記録に並んだ。そして7日、七夕の夜。ロッテは敵地・グリーンスタジアム神戸でオリックスと熱戦を展開する。

逆転10度、サヨナラ4度


 ロッテは先発の黒木知宏が気迫の投球。2点リードで迎えた9回裏、すでに100球を超えていたが球威は衰えず、先頭のイチローを三振、ニールに安打を許すも、谷佳知を邪飛に打ち取って二死として、続くプリアムも1ボール2ストライクと追い込んだ。そこから1球だけ外して、139球目の速球は、左翼席へ飛び込む同点2ランに。黒木はマウンドに崩れ落ちた。試合は延長12回までもつれたが、プロ野球6万号、パ・リーグ3万号のメモリアル本塁打も放っているオリックスの広永益隆が代打サヨナラ満塁本塁打で決着。これでロッテはプロ野球の単独ワーストとなる17連敗。激動のゲーム後、黒木は脱水症状と体力消耗から全身が痙攣し、コーチに支えられながらバスに乗り込んだという。翌8日の同カードにも敗れて18連敗。その翌9日のオリックス戦(GS神戸)に勝利して連敗は脱出したが、まさに、どん底だった。

 マウンドに崩れた黒木の姿は象徴的ではあるが、ファンが見ていたのは、その場面だけではなかったはずだ。必ずしも千葉に定着していたとは言い切れないロッテだったが、18連敗のうち、逆転負け10度、サヨナラ負けが4度。ナインが粘り続ける姿は確実に地元ファンの胸を震わせた。じわじわと熱狂的なファンを増やしていったロッテは7年後、千葉に移転して初の日本一に輝くことになる。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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