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つなぎ止めた69年の歴史。大学野球選手権は「8・12」開幕

 

全日本大学野球連盟・内藤雅之常務理事は4月2日の臨時常務理事会の後、報道陣の前で大学選手権の「開幕延期」について説明した


 1952年から続く、69年の歴史をつなぎ止めた。

 全日本大学野球連盟は4月2日、東京都内で臨時常務理事会を行い、第69回全日本大学野球選手権大会の開催について協議。当初の6月8日開幕を8月12日に延期することを決定した。

 7月24日に開幕予定だった東京五輪・パラリンピックが来年に延期。従来は7月6日から9月13日まで大会組織委員会に神宮球場を貸し出すこととなっていたが、これが消滅。つまり、この期間、神宮球場が使用できるようになり、全日本大学野球連盟、ヤクルト球団による三者で日程調整が進められ、8月の大学選手権開催が可能となった。2005年からは東京ドームも併用してきたが、今大会は16年ぶりに全26試合が神宮球場で行われる。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、各種スポーツイベントの「中止」が相次いでいる。こうした厳しい状況下で、今回の「延期」は競技者にとっても、モチベーションを維持できる、喜ばしい知らせであったに違いない。

 全日本大学野球連盟には、全国各地に26の大学連盟が加盟している。第69回全日本大学野球大会には、27校の代表校(九州地区のみは南北で2代表)が出場する。開幕の1週間前までには出場校を決めなければならず、各連盟では開幕のタイミングについて、慎重に議論を重ねてきた。ほとんどの連盟が開幕延期を決定。運営方式も約2カ月が必要となる通常の勝ち点制(2勝先勝)ではなく、総当たり2回戦の勝率制、または、総当たり1回戦、さらにはトーナメントなど、さまざまな対応策をシミュレーションしてきた。

 しかし、今回の決定により「6・8」に縛られなくなった。「8・12」に合わせ日程を組み直していけばいい「余裕」が生まれた。運営サイドは新スケジュールを組むのはもちろんのこと、球場、試合をジャッジする審判員の手配にも追われる大変な業務が待っている。

 連盟によっては、優勝校決定日から大会本番まで、かなりの時間が空くことが予想される。本来ならば、8月中旬は秋のリーグ戦へ向けた追い込みの時期である。出場校は猛暑の中での公式戦という、難しいコンディションづくりに直面する。一度、ピークを持っていった数週間後には、秋のリーグ戦開幕が控える。不慣れな展開であり、選手個々の自己管理能力が試されることにもなりそうだ。

「連盟によっては、就職活動に専念するため、4年生は春(春季リーグ)で引退する選手も多いんです。つまり、春が大学野球のラストシーズン。4年生に少しでも希望が持てるように、中止にするのではなく、延期にしました」(全日本大学野球連盟・内藤雅之常務理事)

 立大4年生だった長嶋茂雄(元巨人)氏が出場した第6回大会(1957年)以来、63年ぶりの8月開催だ。猛威を振るう新型コロナウイルスは今後も予断を許さない状況であり、情勢によっては再度、話し合いの場が持たれるという。2020年の「大学日本一」を決める大舞台。言うまでもなく、何よりも最優先されるのは、選手の健康と安全対策だ。一日も早い収束、昨年まで68回続いてきた大会が無事に開催されることを、心から願っている。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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