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村田兆治に野茂英雄……個性的な投球フォームだったピッチャー

 

 今シーズンのキャンプで話題となったのが、中日の育成投手・石田健人マルク(登録名:マルク)の投球フォームだ。グラブをはめた左手をグッと高く上げる、まるで「万歳」をするような独特なフォームのため、打者がタイミングを取りにくいと注目を集めた。制球など課題も多いが、この先が楽しみな選手の一人だ。今回は、このマルクのように「個性的な投球フォームだった投手」をピックアップして紹介する。

球史に残る変則フォーム



 往年の名選手には個性的な投球フォームの選手が多くいる。特に有名なのは「マサカリ投法」の村田兆治だ。1971年に、当時ロッテの監督だった金田正一の指導がきっかけで、左足を高く上げ、腕を大きく振り下ろすように投げるフォームを考案。これが鉞(まさかり)を振り下ろす動作に似ていることから、「マサカリ投法」の異名が付けられた。

近鉄・野茂英雄


 野茂英雄の「トルネード投法」も、個性的な投球フォームの代表格といえる。相手打者にこちらの背中が見えるほど大きく体をひねる投球フォームで、日本だけでなくメジャーでも話題となった。トルネードという名前は、近鉄が一般公募の中から選んだもので、当時6000通近い応募があったという。

 野茂以前にも、同じように背中が見えるほど大きく体をひねるフォームの選手がいた。中でも有名なのが阪神のレジェンド・若林忠志だ。背中が見えるほど体を大きくひねりながらアンダースローで投げるフォームで、その動きがロカビリー歌手の振り付けに似ていたことから「ロカビリー投法」と名付けられた。

ヒット曲の振り付けに似たフォームも



 ロッテ、中日、大洋でプレーした佐藤政夫も、独特の投球フォームが注目された選手だ。佐藤のフォームはスリークオーターだが、投球動作の始動からリリースまでの間に体全体をクネクネと動かすため、「こんにゃく投法」「タコ踊り投法」と呼ばれた。ちなみに、佐藤は長嶋茂雄が現役最後の打席で対戦した投手としても有名だ。

 広島でプレーした山内泰幸は、テイクバックの際に右ヒジを高く上げるという独特の投球フォームだった選手。その肘を上げる動作が、ピンクレディーの楽曲『UFO』の振り付けに似ていることから「UFO投法」と名付けられ、多くの野球少年がこの個性的な投球フォームをまねた。

 山内と同じ広島で活躍した小林幹英も、体を沈ませながらグラブを大きく振り上げる独特のフォームで注目された投手。背中側に大きく引いた腕をしならせながら投げる姿は、村田のマサカリ投法をほうふつとさせるダイナミックさだった。

顔の動きが個性的だった投球フォーム



 メジャーでも活躍した岡島秀樹は、ボールをリリースする瞬間に顔を下に向ける「ノールック投法」で話題となった。このような投球フォームで安定したピッチングをするのは至難の業のため、多くの投手が「なぜあの投げ方でストライクが入るのか分からない」と不思議がったほどだ。2010年にアメリカの野球専門サイト『ブリーチャー・リポート』が発表した、「MLB史上に残る個性的なフォームの投手」で4位にランクインした(同ランキングでは野茂も2位に選ばれている)。

 顔の動きが独特だった投手といえば、日本ハム楽天でプレーした吉崎勝が挙げられる。吉崎のフォームは、足を上げた際に顔を後ろに向けるという特殊なもので、その特徴から「あっち向いてホイ投法」や「首だけトルネード」と呼ばれた。

 ここまでさまざまな変則投法を紹介したが、その究極といえるのが、1960年代に中日でプレーした小川健太郎の「背面投法」だろう。文字通りボールを背中側から投げるフォームで、小川が王貞治を打ち取るための奇策として編み出した。実際に王との対戦で合計4度使用されたが、残念ながら一度もストライクは取れなかった。

「個性的な投球フォームだったピッチャー」を紹介した。現役では、日本ハムの宮西尚生や中日の福敬登DeNA平良拳太郎なども変則フォームが特徴の選手。また、新人では日本ハムの鈴木健矢も特徴的なサイドスローが魅力だ。今シーズンは、ぜひこうした個性的なフォームの選手に注目してみてはどうだろうか。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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