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ドラフトはどうなる? 緊急事態宣言、NPBスカウトの現在

 

新型コロナウイルスの感染拡大により、NPBスカウトも頭を悩ませている(写真は昨年6月の大船渡高・佐々木朗希の練習試合)


 7都府県に緊急事態宣言が発令されたのは4月7日。宣言後、初めての週末となった11日、各自治体は不要不急の外出自粛を呼びかけた。

 野球界は止まっている。大会の中止、チームの活動自粛に伴い、アマチュア選手を視察する各球団も活動停止。各NPBスカウトは、自宅で過ごしているのが現実だ。

 ある球団のベテランスカウトは、電話口で嘆いた。3月末を最後に、仕事ができていない状況だ。

「しばらくは(予定が入っていた)手帳を眺めていたんですがもう、あきらめました。1日も早く終息することを願うしかありません」

 ある球団のスカウト幹部は、感染予防対策に気を使う。

「5月6日までは無理。野球以前の問題ですから……。冷静に見て、行くところもありませんから……。(学校や会社の)敷地内に行くのもどうかと……」

 また、スカウト部門を統括するある球団の管理職は在宅勤務で、情報収集に余念がない。可能な範囲で動画等をチェックしている。「もちろん、判断材料ではなく、イメージの範囲内です。予備知識を蓄えた上で、実際のプレーを見る。今、できることをやるしかない」。

 ドラフト候補を高校生、大学生、社会人に分類すると、高校生の「見極め」が最も難しいという。前出のスカウト幹部は明かす。

「高校生は何が起きているか分からない。確かめようもない。昨秋の段階では下位候補であっても、一冬を越えて、(11月5日に予定される)ドラフト会議までには12人(ドラフト1位)に入ってくることもある。われわれは状態が上がってくるこの時期を経て、夏まで追いかけることになる。仮に(緊急事態宣言が)解除されても、夏まで実質2カ月です。これは、難しい判断。われわれとしても、例年どおりの動きではダメだと考えています」

 前出の管理職はこう見解を示す。

「この1カ月、思うように体を動かせない中で、視察した際に『調整不足』として差し引いてみるのか……。それが、本来の実力かもしれないですし、その点も難しい判断です」

 大学生、社会人はある程度、イメージが沸くのに対して、初めてドラフト解禁を迎える高校3年生は未知数。夏までには、身近にいる関係者でさえ、信じられない成長曲線を描く可能性もある。スカウトは結果よりも、その過程を大事にする。春から夏と継続して視察できない現状が、悩ましいところだという。

 野球と向き合う姿勢、練習でのパフォーマンスがどんなに素晴らしくても、最終ジャッジは実戦になる。大学生は秋のリーグ戦、社会人は9月に都市対抗予選が控えており、まだ、視察する機会は残されている。

 今年に限らず、最も早く「引退」を迎える高校生は、どの球団も最優先で視察するのが流れ。すでに、春の大会はほとんどが中止に追い込まれ、公式戦は「夏一本」。新型コロナウイルスは今後も予断を許さない状況が続くが、仮に活動再開すれば、各球団ともまずは、高校生の練習や練習試合に足を運ぶことになる。つまり、高校生中心のシフト。ただ今は、不要不急の外出を控えるしかない。NPBスカウトにとっても、我慢の約1カ月となる。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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