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【MLB】開幕への道は険しいが、MLBは労使団結で難局に対処

 

MLB機構と選手会でこの困難を乗り切るため、話し合いながら開幕の道を探っている。ここからはマンフレッド・コミッショナー(左)とクラーク選手会専務理事のリーダーシップがカギを握る




 新型コロナウイルスでアメリカの感染者数は3月末時点で19万人近く、死者数も4000人近くに及んでいる。MLBは6月にロンドンで予定していたカブス対カージナルスのシリーズをキャンセル。一部報道では、開幕できたとしても7月になるとの見方も出ている。

 そんな中、MLB機構と選手会はシーズンがキャンセルされた場合などについて約2週間の話し合い、3月26日夜に合意、27日にオーナー側の承認を得た。過去、両者は利益分配などで何度も揉め、話し合いは長期化してきたが、今回は人類が危機的状況に直面する中、双方が妥協し、午前も午後もぶっ通しで調整し、短期間で合意した。そこはさすがだと思う。

 大きい争点は前回このコラムで書いたサービスタイムの扱いだが、シーズンが完全にキャンセルされても、選手はサービスタイムをフルにもらえることとなった。オーナー側が妥協し、ムーキー・ベッツらは年末にFAになる。一方でオーナー側は4月と5月まだシーズンが始まらないうちに、選手側に総額1億7000万ドルのサラリーを先に支払うことになる。そしてそのままシーズンがキャンセルされた場合でも、払う金額はそれだけで、選手側は訴えることもしないと決まった。

 19年シーズン、MLB球団が払ったサラリー総額は約39億ドル。ここは選手側が妥協したと言えるだろう。MLBは昨季107億ドルと史上最高の収益を上げた。だが今季は一転金庫の中は空っぽ。お金のない球団は早くも従業員の一時解雇を検討し始めている。

 ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは4月までは給料を払うようにと全球団を説得。しかし事態が好転しなければ5月には解雇が始まるだろう。そんな状況だからMLB機構も選手会も、なんとか一日でも早く開幕を迎えたいと願っている、

 少しずつでもお金を回したい。しかしながらカナダのトロントは新たに6月30日まで集団イベントを禁止と発表、ほかの都市も続くのは必死で、観客をスタンドに入れての通常通りの開催は難しい。そこで今、まだ可能性があるものとして探っているのは無観客試合での開催である。

 選手会のトニー・クラーク専務理事も「選手たちもファンが家で見ることになっても、一刻も早く試合を届けたいと思っている」と語っている。その上で選手会は、ダブルヘッダーを受け入れ、過密スケジュールでも試合をたくさんこなすことに協力する。その分選手がオーバーワークにならないよう、機構側はベンチ入り枠を26人ではなく30人前後に広げる。

 10月になっても公式戦を続け、11月に温かい場所でプレーオフを行う。仮に6月初めに開幕できれば1球団130試合くらいはできたかもしれない。しかし今、時期はさらにズレる予想で80から100試合もできれば良い方だろう。

 開幕後、チーム内で集団感染が起こる事態も避けたい。MLB機構と選手会の話し合いでは、今後はマンフレッドコミッショナーのリーダーシップの下、団結して難局に対処することでも合意した。いつ、どのような形で開幕し、開幕後も状況に応じて、中断やキャンセルもある。一刻を争う難しい事態だからこそ、強いリーダーの素早い判断力に委ねるのである。



文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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