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高校球児回顧

史上6校目の春夏連覇! “琉球トルネード旋風”興南高・島袋洋奨【高校球児回顧】

 

2010年春のセンバツで頂点に立ったエースは興南高・島袋洋奨。沖縄勢では1999年、08年センバツの沖縄尚学高に続く3度目の優勝


 甲子園の「琉球トルネード旋風」から10年が経過した。

 2010年春のセンバツ。2年連続4回目の出場となった興南高(沖縄)が初優勝を遂げた。5試合をほぼ一人で投げ切ったのは左腕・島袋洋奨(元ソフトバンク)だ。173センチの小柄ながらスタミナ十分。延長12回となった日大三高(東京)との決勝でも198球を投げ切った。

 2年春、夏の甲子園は力投しながらも打線の援護がなく惜敗。「3度目の正直」となった同春は5試合で36得点と攻撃陣がバックアップした。1999年春、08年春の沖縄尚学高(08年の同校エースはソフトバンク・東浜巨)に続き、沖縄県勢として3度目の頂点に立った。

 46イニングで49奪三振。独自で取り組んだ体を大きく捻るフォームは、173センチの身長以上に角度があり、打者はタイミングを取るのが難しかった。すでに、映像技術も発達していた時代である。各校はビデオで徹底的に研究を重ねたが、やはり、実際に打席に立つとボールのキレは違ったようだ。

 最速145キロ。タテ変化のスローカーブは緩急自在で、左打者に対するツーシームも威力を発揮した。「トルネード」は小学校時代に在籍した志真志ドリームス時代に編み出したといいう。もともとは右利きだったが、元投手(北山高−西日本工大)である父・直司さんが「左のほうが有利」と、3歳時に左のグラブを購入したのが転向のきっかけである。

 体重移動が生命線のトルネードは、スタミナの消耗が激しい。2年時の甲子園では体力不足から終盤に失点を重ね、涙をのんだ。2度の反省から、3年春のセンバツを前に3日連続での150球の投げ込み、40段ある階段での左足ジャンプで軸足を強化。沖縄は雨が多い。しかし、天候を言い訳にするのではなく、雨天でも長靴を履いて練習を続けた。島袋は興南高・我喜屋優監督との二人三脚で心身を鍛え上げ、無敵のフォームを作り上げたのだ。

 同夏の甲子園も制し、史上6校目の春夏連覇。沖縄勢初の快挙で、高校野球史に新たな1ページを刻んだ。中大では東都大学リーグ戦で通算12勝を挙げ、4年時には主将を務めた。15年ドラフト5位でソフトバンク入団。一軍登板2試合で、昨季限りで現役を引退した。

 今年4月、事務職員として母校に戻った。12月には学生野球資格回復の研修を受講し、高校野球の指導者を目指していくという。例年の流れでいくと、21月2月に資格回復者として認定され、早ければ、同月にも指導をスタートできる。プロでは必ずしも、成功したとは言えなかったが、何ものにも代え難い5年間を過ごした。甲子園で春夏連覇を遂げたエースにしか伝えることができない経験談、努力の足跡をアマチュア球界に残すべき。興南高野球部を一から作り上げてきた、我喜屋監督の教育論を継承する責務も担う。それが、島袋に託された野球人としての使命だと思う。

文=岡本朋祐 写真=BBM

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