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デーブ大久保氏が今季はロッテが有利と考える理由は?/Daiki’sウォッチ

 

目標設定日がない難しさ


「ユニフォームを着て動く感覚を忘れないように、あえて自主トレでユニフォームを着ようと思います……」

 現在、時間が限定されてのグランド開放の中で各選手たちからは、こんな声が聞こえてきている。緊急事態宣言を受けて、想像以上に長く続く自主練習時間。日本プロ野球開幕のメドはいまだ立っていない。

「目標が決まっていれば逆算できるからまだいい。キャンプインも、オープン戦も、シーズン開幕も目標設定日があるから逆算できた。今回の場合は、目標が先へ先へ伸びて……結果、まだ決まっていない。非常に難しい状況」

 巨人、横浜で活躍した野球解説者の仁志敏久氏は、選手にとって「目標設定日がない」という状況の困難さを語る。

 さらに横浜でエースとして、投手コーチとしてもチームをけん引した野村弘樹氏は、「とても長いシーズンになる。非常に長い。先が見えないような長く、タフな1年になる。これは選手にとっても、チームにとっても。心身ともにとてもタフ。1回、気持ちをゼロに戻せるかどうかが非常に重要」と今季の展望を分析する。

 交流戦の開催を苦渋の決断で断念し、試合数を減らすことを決めた今季。現状では6月中の開幕を想定しているが、まだ見通しは立っていない。そして、ほとんどのチームが選手各自に調整を任せている状況が続き、全体練習は行われていない。公式戦の試合勘を取り戻すその前に、全体練習、チーム練習、組織プレーの感覚をどうやって元に戻していくのか。開幕前に非常に大きなハードルが待っている。

 西武で一軍コーチ、楽天で一、二軍監督を務めた大久保博元氏もコロナ禍でのチーム運営の難しさを指摘する。

「選手は力んでいますよ、精神的にね。いつ始まるんだろう、いつプレーできるんだろう……そう思っているうちに精神的な焦りから身体が力むようになる。それを解放してやれるか。1回、チームも選手も解散! それくらいの気持ちに持っていかないとケガをしますよ。開幕日がもし決まっても、今の状態から“よーいドン”で動いたら、心と体のバランスが取れず、相当な選手がケガをするリスクがある。経験したことがないからね、この時期に1カ月近くの自主練習なんて」

精神的な部分をいかに操れるか



 確かに、例年どおりシーズンがスタートしていれば、開幕して1カ月。前半戦の一つの山ともいえるゴールデンウィークの連戦がやってくるころだ。今年は新型コロナウィルスの影響でファンもご存じのとおり、各選手が短い時間で自主練習を行い、自宅と練習場の往復が続く。試合の疲労感はなく、平日はナイターゲーム、週末はデーゲームという生活リズムも生まれていない。

「チーム運営の能力、監督をはじめとした首脳陣の選手の扱い方のうまさが顕著に出るシーズンだね。しかも精神的な部分をいかに操れるか。そういった意味では順天堂大学の研究チームと提携した井口資仁監督率いるロッテは面白いかもしれない」と大久保氏は分析する。

 ドラフトの超目玉、佐々木朗希を獲得したロッテはドラフト後、すぐさま順天堂大学医学部附属順天堂医院、そして順天堂大学医学部附属浦安病院との提携を発表。今のロッテは医療面、栄養面だけでなく心身のコンディショニング面においても全面サポートを受けている。

「自分が緊張していない、力んでいないと思っていても、交感神経と副交感神経のバランスデータを見れば、緊張している、力んでいるということが分かる。交感神経が一気に上がれば簡単に言うと興奮状態、それを整えて沈めてくれるのが副交感神経。このバランス、この感覚のズレがケガを呼び、シーズンを棒に振った選手を見てきた。ロッテにはこのあたりのデータを分析し、アドバイスしてくれる専門家たちがいる。今の状況はもしかしたら井口ロッテに大きくプラスに働くかもしれない」と大久保氏は今季の展望を予想する。

 前代未聞の状況となった今季。止まってしまっているように見えるチーム運営。しかし、この状況下で、困難を極めるシーズンを乗り切る戦略を各チームがいかに打ち出しているか。初めて経験するメドの立たない開幕日が、目の前にやって来たとき、地に足を着けてプレーできるチームはどこなのか。

「誰も経験したことのない、これまで過去にないシーズン」という他球団以外の目に見えない敵が潜む今季、一体どんな序章が、そして最終章はどんなドラマが待っているのか。いずれにせよ、コロナ禍を超えた先には歴史的なシーズンが始まるに違いない。

文=田中大貴 写真=BBM
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