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ベースボールゼミナール

セもDH制になったら投手にはどんな影響がある?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.昨年の日本シリーズ終了後、巨人の原辰徳監督が「セ・リーグでもDH制を導入すべきだ」との考えを明かしました。仮に、DH制となった場合、セ・リーグのピッチャーにはどのような影響がありますか。メリット、デメリットを教えてください。(北海道・14歳)


DH制になれば投手が打席に立つこともほぼなくなるが……(写真は巨人菅野智之


 私は現役時代、阪神でセ・リーグを、楽天でパ・リーグを経験しています(アスレチックスでDH制のあるア・リーグ、ジャイアンツでDH制のないナ・リーグも)。DHの野球は基本的には投げることに専念できるので、ピッチャーとしてはありがたい部分です。

 ただ、日本では交流戦、MLBではインター・リーグがあります。もともとDH制のある側のピッチャーの立場からの話になりますが、このような特別なゲームの場合、特に注意しなければいけないのは打撃時、走塁時のケガでしょう。私は経験がありませんが、メジャーなどでは走塁時のケガが少なくありません。ヤンキースはア・リーグですが、田中将大選手が一昨年のインター・リーグで、三塁から生還した際、太腿裏を痛めて故障者リストに入ったことがありました。これは初めてのことではなく、15年にもバントをして走り出した際にケガをしたことがありました。だからピッチャーにとって打席に立つのは良くないというのではなく、もともとDH制のないリーグのピッチャーたちは、これらのリスクを背負いつつ、うまく対処しているということです。

 ちなみに、アメリカではDH制のないナ・リーグからDH制のあるア・リーグに移籍すると、一時的に成績を落とすと言われています。ただし、力のあるピッチャーは翌年、成績を上げる。この場合の力とは何かというと、ボール自体の力や基本的なピッチャーとしての能力はもちろん、慣れや、リーグの特性に対処する適応力だと私は思います。

 話が逸れましたが、DH制になった場合、ピッチャーは投げることに専念できるのはメリットでしょう。また、自分が打席に入ることを考えなくていいので、インコースを攻めやすくなる。やり返されることはないわけですから。セ・リーグでは八番に打力の高くないキャッチャーがいれば、八、九番で2個のアウトが計算できます。1試合で各3打席回れば、2イニング分のアウトです。それがなくなるのはデメリット(と言っていいのか……)。ココをパ・リーグのピッチャーは全力で抑えるので、その積み重ねで強さが生まれるという考えもあると思います。

 ただ、セはセの、パはパの良さがあって、野球が異なります。それが面白いのであって、一律にDH制することに関しては、私は反対です。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年3月30日号(3月18日発売)より

写真=BBM
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