一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 加藤チャはイケメンか?
今回は『1971年6月14日号』。定価は90円。
5月25日の
ヤクルト戦(神宮)で
巨人・
長嶋茂雄が史上5人目の通算2000安打を達成した。
これを受け、巻頭では長嶋と新国劇の島田正吾の対談があった。
実は、対談はこの日の試合後に予定され、島田は試合も観戦していた。
対談の中で打撃フォームについて触れた個所があった。
当時、長嶋は盛んに「ヘッドアップ」、要はアゴが上がるようなフォームを批判されていたらしい。
対して、
「僕の場合でしたら、ある程度、ヘッドアップしても、そのヘッドアップした分を手首で補ってカバーしていくということで、それが1つの長所になりますけどね。一概にこれがダメだと決めつけること自体が、ちょっとおかしいんじゃないですか」
「だってフォームというのは力学的なものでしょ。各個人差はあるだろうけど、いかにして体をうまく使いこなせるか、使い切れるかということでしょ。逆にいえば、体にはみんな個人差があるんだから、その体を使いこなすのは、それぞれの特徴を生かさなきゃうまくいかないわけでしょう。
だからあまりに今、フォームにこだわり過ぎるというか、そういう傾向が強いと思うんです。お客さんが見たいのは、まとまったフォームなんかより、豪快なホームランやクリーンヒット、あるいはいい守備だけじゃないんですか。僕はあんまりテニック的なことを、どうこうということは、必要ないような気がしますね」
長嶋はもともとアウトステップの悪癖を批判されることが多かったが、左肩も腰も開かず、まさに二枚腰のように打っていた。
天才で括られることが多く、本人もそのようにふるまったが、実際には、自身の体に合わせた、きちんとした理論もあったのではないかと思う。
阪急では
山田久志が8勝目、
福本豊が年間最多盗塁85を塗り替える勢いで走り続け、
加藤秀司も三番に定着。1969年入団組が躍動していた。
その加藤についたニックネームが「チャ」だった。もちろん、ドリフターズの加藤茶である。
加藤(茶じゃないほう)はこれに不満たらたら。
「チャ、チャと言われると、失敗したとき舌打ちされる感じで、どうもぴったりこないんだよな。そりゃ俺は加藤茶のようにハンサムじゃないし、面白い男じゃないけど、もう少しマシなニックネームがあっていいと思いますが」
加藤茶がイケメン枠か、と思うなかれ、若手時代はアイドル的な人気もあった。
しかし口に悪い先輩たちは「じゃあ、(高木)ブーともいえんやろ。それともゴリラにするか」。
加藤もあきらめたのか、
西本幸雄監督や先輩にチャ、チャと言われても素直に返事をするようになったという。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM