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【MLB】アリゾナに30球団集結、5月下旬無観客開催は可能なのか?

 

夏は猛暑のアリゾナで無観客開催を模索しているメジャー。開閉式で人工芝のチェイス・フィールドとはいえ、それ以外の部分で解決しないといけないさまざまな問題が残っている



 MLB機構と選手会がアリゾナ州フェニックスとその近郊での無観客による公式戦開催案について協議している。

「アリゾナプラン」と呼ばれるその内容は、5月、30球団が、選手、コーチ、スタッフなど100人を集め2、3週間のキャンプを行い、早ければ5月末に公式戦を始める。使うのはダイヤモンドバックスの本拠地チェイス・フィールドをはじめ、10のキャンプ施設の本球場など。選手とチーム関係者は近郊のホテルから球場の間を往復するだけで一般の人から隔離。試合中も選手はダグアウトではなく、無観客のスタンドでそれぞれ180センチ以上離れて座る。

 加えて、常にウイルス検査ができ、結果も早く分かるようにする。このアイデアはアメリカ疾病管理予防センター(CDC)、国立衛生研究所の幹部も支持しているという。徹底した隔離で野球が安全にできれば、新型コロナとの戦いに疲れたアメリカの人々の心を励まし、勇気づけられる。第二次世界大戦や同時多発テロの時と同様、大惨事の最中に国民的娯楽としての使命を果たすのである。

 ちなみに無観客となれば、チケット、球場売店、駐車場などの売上がゼロになる。昨季のMLBの収益107億ドルのうち40億ドルがそれだ(37パーセント)。ただTV放映権料は入り、ほかのスポーツも一切行われていない現状では、全米中継の試合数が増える可能性はある。

 前回このコラムで書いたようにMLB関係者は少しでもお金が回るようにしたいし、選手も保証される前払い分だけでなく少しでも多めに稼ぎたいため、公式戦開催の可能性を探るのである。とはいえ、このアリゾナプランには懸念材料が少なくない。まず健康と安全面。総勢3000人の球団関係者だけでなく、審判、TV関係者、ホテルの従業員、バスの運転手なども開催に不可欠だが、彼らもきちんと隔離してウイルス蔓延を防止できるのか?

 そして6 月には気温が40度を越す猛暑のアリゾナで果たして毎日野球ができるのか? ベンチ入り枠が26人から30人前後になるという話はすでに書いたが、夏のアリゾナなら最低50人は必要になるのではないか。仮に試合を東海岸のプライムタイムに合わせて始めた場合(時差は3 時間)、夕方4時、5時のスタートで、まだ十分に暑い。夜7時からだと10時に終わり、東海岸は午前1時で遅過ぎる。

 救いはチェイス・フィールドが開閉式のドーム球場で球場内はエアコンが効いていること。しかも人工芝。ゆえに無茶な話だが、ここでダブルヘッダーやトリプルヘッダーを行う可能性も探っている。もう一つの問題は、2020年シーズンが最後までアリゾナで開催された場合、選手たちは4カ月以上も家族と離ればなれになる。仮に奥さんが出産となったとき、家族に不幸が起きたとき、立ち会えるようにできるのか?

 現地時間4月19日現在、アメリカは感染者が約74万2000人、死者は約4万人と急増している。そもそもこんな悲惨な状況で開催案が出てくること自体どうなのか?

 MLBは「話し合いはしているが開催を決めたわけではないし、具体的ではない。定期的に政府や保険機関と連絡は取っているが何一つ了承も得ていない。まずは健康と安全が第一」と釈明していた。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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