金子侑司にとって特別しびれる機会がある。一塁ベースからスタートを切った直後、「捕ってからがやはり速い」と感じるスピードで白球が金子の目の前を通過する。ソフトバンクホークスの甲斐拓也捕手から盗塁を試みるときは、「やっぱり意識はしますね」と話す。昨年、甲斐捕手との対戦成績は6度の盗塁企図で3勝3敗。「とにかく（送球）の正確性が高いです。投手のクイックが多少緩いなと感じても、それをカバーする力があるので」と難敵のイメージを振り返った。

　金子自身、現在の自主練習のテーマは「ウエート」だ。現在は水口大地とともにウエートルームで和気あいあいとメニューをこなしていく。「水口“トレーナー”と楽しく（笑）、でもひたむきにやっています」と笑う金子だが、この期間に再びウエートに時間を割くのは「打つときのインパクトの強さ」「（走り出すときの）一歩目のスタートの力強さ」を強化するためだ。今日7日は、ライオンズトレーニングセンターで、マシン打撃を行った後、約1時間強をウエートに充て汗を流した。

「一歩目の力強さ」をさらに強化した先には3度目の盗塁王が見えてくる。

「今は実戦がなかなかできないので。盗塁成功の感覚を持つのは難しいですが、全体練習が始まるまでにしっかり動けるようにしておくことですね」と前を向く。「自宅で入浴、半身浴をしたりマッサージをしたり……」と“黄金”の足のケアもしっかり行っている。

　そんな金子が特に印象に残る盗塁がある。昨年のソフトバンクとのクライマックスシリーズファイナルステージ第1戦（メットライフ）。1点リードで迎えた4回裏、二死から二盗を決めたが、「スタートを切った瞬間に、ものすごいライオンズファンの歓声が聞こえてきて、走っている間も、セーフになった瞬間もものすごく盛り上がっていただいた」と振り返る。

　パ・リーグには強肩捕手が各球団にいるが、「“対ピッチャー”で行けると思ったら行きます」と言い切った。「盗塁を1つ成功させるのはとても難しいことだし、本当に勇気がいる。でも、リスクが多いプレーなので成功したときのうれしさというのはひとしおです」と笑った。

　今は金子にとって3度目の盗塁王、そしてリーグ優勝に向けての準備期間。「あの大歓声の中で盗塁を決めたいですね」とはにかむ金子は、今季も並み居る強肩を潜り抜けて、たくさんの勝利を手繰り寄せる最高のパフォーマンスを見せてくれるはずだ。

西武ライオンズ