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週べ60周年記念

広島カープが禁酒禁水で躍進?/週べ回顧

 

 一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

衣笠祥雄、山本浩のライバル関係


四番で打ちまくっていた衣笠(左)



 今回は『1971年7月5日号』。定価は100円。

 再び前回の同じ号から。今回は広島衣笠祥雄の写真にした。

 今回は5月13日から1分け挟み10連勝、6月5日から5連勝で首位巨人を追う広島について書いてみよう。
 例年、カープが好調なのは鯉のぼりの季節までと言われたが、この年は梅雨時になっても、元気にたなびき続けている。
 広島好調の隠れた要因として挙げられていたのが、前年から始まった「禁酒禁水令」だ。
「グラウンド内外でアルコール、清涼飲料水、生水を飲むのを禁ず。のどが渇いたら熱い番茶を飲め」
 というものだった。
 それまでのカープは夏場に胃腸を壊す選手が多く、前年、根本陸夫監督と関根潤三広岡達朗らのコーチで相談して決めたという。
 根本監督は言う。
「調べさせたら、遠征の宿舎でのビールやコーラのつけ(後払い)が、うちのチームが12球団で一番多いという。これではいけないと禁止にした」
 給料が安く、外に飲みに行けなかったのもあるかもしれない。

 選手も春先は我慢したが、6月下旬になって選手会として根本監督に「俺たちは高校生じゃない。そこまで規制することは人権問題じゃないか」と撤廃を要求した。
 しかし、根本監督は、
「健康管理の問題だけじゃないんだ。精神面の狙いもある。やれるかやれないか、できる限界までぎりぎり頑張ってみようじゃないか。一種の我慢比べと思ってくれていい」
 と突っぱねた。
 根本監督の中には「プロになった」というだけで、大して実績もない若手までベテランと同じようにふるまいがちなのが嫌だったようだ。
 いい思いをしたければ、しっかり結果を出してからにしろ、というところだろう。
 これには罰金もあったが、実際、寮生活以外は自分の家で何をしようが分からないし、寮生活でも厳しくチェックしたわけではない。
 前年ヘッドコーチをしながら寮長も務めた関根は言う(この年は退団し、解説者)。
「外で飲んでいる者は当然いる。ただ、広島はファンもカープも一体で、夜、外からこんな電話がかかってくる。“今、カープの選手がバーで飲んでるぞ”なんてね。われわれの耳には全部筒抜けだったが、規則があれば同じ飲むところでも2杯を1杯に我慢しようという心理になる。だから僕は分かっても何も言わなかった」
 さすが関根さんだ。

 なお、この件に関しての広岡の言葉は記事中になかったが、このときの経験がヤクルト西武の管理野球につながったのか。

 好調カープの打の中心が5試合連続本塁打もあった衣笠だが、これに刺激されていたのが、山本浩司(浩二)だ。「あれ(衣笠)がガンガン前で打つでしょ。すると、どうしても気になってね」と山本。この力みから不振に陥っていたが、6月15日の巨人戦では決勝の3ラン。ただ、逆になったか、この試合、衣笠はぼてぼての内野安打1本だけだった。
 首脳陣は「そろって打ってくれんかな」と話していた。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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