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川口和久WEBコラム

絶滅危惧種アンダースローを救え?/川口和久WEBコラム

 

もっとも体を駆使するが、一番美しいのはアンダースロー


俊介のフォームはきれいだったな



 投手の投げ方は大きく分けて6つ。オーバースロー、サイドスロー、アンダースローの3種類が左投げ、右投げである。
 このうち、当たり前だが、球速を出すならオーバースローが一番いい。重力を使うというのかな。
 逆にアンダースローは重力にさからい、下から上に投げる。体を目いっぱい使い、強さと柔らかさがないと、とても1試合は投げ切れない。
 合理性には欠けるが、極めれば、美しいフォームにもなる。

 昔であれば、阪急・山田久志さん、ロッテ渡辺俊介、今なら楽天牧田和久ソフトバンク高橋礼か。みなそれぞれタイプは違うが、同じ投手から見ても、ほれぼれするような、きれいなフォームというのは共通点である。

 特に俊介かな。地面ぎりぎりから投げ、球速はたぶん120キロくらいだったと思うが、そこにさらに遅い変化球で緩急をつけてプロのバッターを手玉に取った。

 高橋礼も面白い。身長186センチでしょ。それがわざわざ体をかがめ投げている。長い球史の中でも長身アンダースローは初めてだと思う。
 ただ、これはこれで打者からしたら打ちにくいとは思うけど、もったいない気もする。
 いつか上から下からの“二投流”も見てみたいな。
 
 アンダースローは昔、各チームに必ず何人かいたが、今では指折り数えるほどしかいない。ある意味、絶滅危惧種になっている。
 一つにはアンダースローが苦手とする左打者が増えたことがある。右打者からしたら背中から投げられるような厄介な投手たちだが、左には球筋を長く見られる。

 しかも、アマチュアのスカウティングレポートにも「最速150キロの右腕」とか球速が最大条件みたいに書かれている。アンダースローではせいぜい130キロでしょ。体感では、もっと速いけど、スピードガンを通せば、その程度。
 ただ、この流れを突き詰めていくと、みんな185センチ以上でオーバースローでと、同じようなタイプばかりになる。それじゃ野球というより、球速勝負だよね。ちょっと味気ない。

 巨人斎藤雅樹がオーバースローからサイドスローにして大化けしたのは有名だけど、球速自体は落ちても、腕を下げることで球の切れ、制球力が増した結果だと思う。
 俊介も子どものころ、体が小ささをハンデにしないためにアンダースローにしたという話を聞いた。お父さんがすごく厳しくて、毎朝、徹底的に鍛えられたという。
 
 長所の生かし方は1つじゃない。プロを目指しているが、体が小さく球速が出ないという人、二軍でくすぶって、このままじゃ、クビを待つしかないという選手は思い切って腕を下げてみるのも手だと思う。

 今のプロ球界で一番空いているのが、アンダースロー枠であるのも確かだしね。
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