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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

高校野球「地方大会」の「代替大会」開催はそう簡単ではない

 

甲子園を目指す「地方大会」は中止。都道府県高野連による独自の大会運営が協議されているが、実現へ向けた課題は山積している


 全国47都道府県高野連は、かつてない難しい立場にある。今夏の「独自大会」の開催へ向けたハードルは、極めて高いからだ。

 79年ぶりの全国大会中止。甲子園の代表校を決める49地区の地方大会も、それに紐づく形で中止となった。つまり、日本高野連が主催する大会は消滅し、その傘下にある都道府県高野連主催の地方大会もなくなった。日本高野連は地方大会中止の理由をこう挙げた。

・感染リスクのゼロは不可能
・休校、部活動停止による調整不足
・夏休み短縮による学業への支障
・運営役員、審判員の確保
・治療に傾注している医療スタッフを例年どおり、球場に常駐する難しさ
・公的施設(球場)の使用制限

 日本高野連は全国47都道府県高野連による「独自大会」の運営については「自主的な判断」に任せている。このまま、3年生最後の夏を終わらせては……。区切りの夏。花道を飾る夏。集大成の夏。真剣勝負の夏。学校によって、その受け取り方はさまざまだが、甲子園を目指す大会とは別のステージを模索する動きへと移行したのである。

 しかし、ただでさえ「断腸の思い」(日本高野連・八田英二会長)で中止にした「地方大会」の「代替大会」の開催は、そう簡単ではない。第2波、第3波が必ず来ると言われる新型コロナウイルスの感染拡大のリスクもある。それよりも、高校野球の原点である「教育の一環」に目を向けなければいけない気がする。

 政府からの要請が出た2月末以降、新学年が始まった4月になっても休校は長引いた。緊急事態宣言中はオンライン授業を展開した学校もあるが、学業の遅れを取り戻すのは大変だという。当面は学校の再開、通常授業という流れに持っていくことが先決。ある学校では例年、7月20日過ぎに夏休みに入るが、今年は同月末に試験が控える。8月以降も授業が続き、お盆休みを挟んで、すぐに授業再開。すなわち「独自大会」と「授業」が重複するのは、確実な状況と言える。それでもなお、大会を開催するとすれば土、日、祝日しか試合を組めないのが現実的だ。

 野球と授業、どちらが優先されるのか。

 当然、後者である。通常ならば「公欠」を認める学校もあるかもしれない。ところが、今年ほど、カリキュラムが遅れている現状、学校としても、なかなか受け入れられるものではないだろう。つまり、出場辞退する学校が相次いでもおかしくないほど、教育現場は切迫しているのだ。大学進学を目指す生徒は、夏休みには本腰を入れなければならない。一般生徒よりも入試の準備に乗り遅れることとなれば、将来への不安は募るばかりだ。

 指導者の誰もが理解していることだが、今回、「教育」について、あらためて認識する機会となった。学校における教育活動が成立して、初めて課外活動(野球)に没頭できる。野球があっての学校ではない、ということだ。

 大会開催の可否。その「最終ジャッジ」は日本高野連から都道府県高野連へと移った。仮に、日本高野連が全地方大会を差し止めにしていたらどうなっていたのか……。福岡県高野連は5月25日、県独自の大会を開催しない方針を発表した。結果的には開催できる連盟と、できない連盟に分かれるかもしれない。高校球児によって、その「差」が生まれることで、混乱にならないよう祈るばかりだ。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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