週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

全国トップの進学校・開成高。野球部員に求める「究極の自主性」

 

1999年から開成高を率いる青木秀憲監督は東大野球部OB。95年からは東京六大学リーグ戦の審判員として運営面でも活躍している


 緊急事態宣言の全面解除を受けて、学校教育は全国各地で段階的に再開している。

 東大の合格者数で39年連続1位の開成高(東京)も、6月1日から分散登校が始まった。2週間様子を見て、15日から通常授業を目指している。新学年の4月以降はリアルタイムでのリモート授業、課題学習を提示、動画を制作しての教材配信など、各先生が工夫を凝らしてカリキュラムを消化してきたという。

 野球部は政府の休校要請を受けてから活動停止。1999年からチームを率いる青木秀憲部長兼監督はこの3カ月、主将・内田開智(3年)と連絡を取る以外、部員との接触はない。

「週に1回はA4用紙1枚の文面で、今やるべきことなどを配布していますが、果たして目を通しているか……(苦笑)。もともと、1から10まで手取り足取りではありませんので。全体練習は週1回。監督が見ていないところで、いかに自立して考えて動き、グラウンドで実践することを追い求めてきました」

 バントをしない。スクイズをしない。サインプレーはない。とにかく、強い打球を打つ。通常の練習メニューも原則、部員たちからアイデアを挙げ、実行に移している。そうした自主的な取り組みで2005年には東東京大会5回戦、07、12年には同4回戦と進学校はコンスタントに存在感を示してきた。同校野球部は、かつて書籍やテレビドラマのテーマになるなど、独自のスタイルを継続している。

 5月20日、全国大会(甲子園)と地方大会中止が発表。青木監督は私見を述べる。

「8月で甲子園、という縛りでいくと難しかったのだと思います。この社会情勢で、できる範囲の最大限を模索した中での結論はやむを得ない、と。3年生は気の毒だと思います。心中察するに、余りあるところではある」

 都道府県高野連で検討を重ねている「独自の大会」「代替大会」については――。

「多くの高校は、地方大会で終わるわけですから、実を結んでほしいと思います。そこまで積み上げた技術、体力を発揮して活動を終了する。ウチの生徒は『甲子園』というあこがれを、少なからず持っているとは思いますが、それよりも積み上げた力量を『確認の場』として位置づけている面が大きいです。1回戦レベルなのか、それ以上なのか……」

 開成高にとっては「甲子園」を目標設定するのは、あまりにも「現実味がない」(青木監督)という。そこで指揮官はここ数年「シード校レベルと互角に戦うレベル」を追求している。甲子園を狙う強豪校と善戦できれば、全国の空気を体感できる。実体験を得られれば、次なる目標設定にアップデートが可能なのだ。

 今後、通常授業となれば、週1回の部活動も3カ月ぶりに再開する予定である。活動休止期間中、部員主導でオンラインミーティングを実施したという。内田主将からの事後報告に青木監督は「それが、あるべき姿。うれしかったですよ」とニンマリ。「これまで自分がやってきた、指導の真価が問われる」。全国トップの進学校・開成高では「究極の自主性」を、野球部員への評価対象としている。

文=岡本朋祐 写真=開成高校野球部提供
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング